数理情報学

東京大学数理情報学談話会

数理情報学専攻で実施している談話会の情報です.

最新の談話会

第17回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

日時:2024年2月19日(月)17:00--18:00
場所:東京大学 本郷キャンパス 工学部6号館 3階 セミナー室AD

講演者

今泉 允聡 先生(東京大学大学院 総合文化研究科)

講演題目

現代的データ科学の数理:新しい高次元統計とインコンテキスト学習の統計理論

講演概要

現代的データ科学のひとつである深層学習・人工知能技術が大きく発展し、これらの効率的に制御・発展させるための数理的な理解が求められている。本講演では、このトピックに関連する二種類の研究を紹介する。(I) ひとつ目は、大規模ニューラルネットワークに代表される過剰パラメータモデルのための高次元統計である。従来の高次元統計は余剰次元を削減する方法論を発展させてきたが、近年の大自由度モデルは明示的な余剰次元を持たないため、近年は異なる方法論が発展している。本講演では、この方法論をより実践的な統計モデルに応用した研究成果を紹介する。 (II)ふたつ目は、ChatGPTなどの基盤モデルという人工知能技術を説明する、インコンテキスト学習というスキームの統計理論的解析である。本研究では、基盤モデルに用いられるトランスフォーマーの観測分布を効率的に扱えるという性質により、インコンテキスト学習が一定条件下で効率的な学習を実現できることを議論する。

以前の談話会

第16回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

日時:2023年10月23日(月)14:00--15:00
場所:東京大学 本郷キャンパス 工学部6号館 3階 セミナー室AD

講演者

小島 武仁 先生(東京大学大学院 経済学研究科)

講演題目

いちからわかるマッチングの数理と制度設計の経済学

講演概要

入試や就活、保活など社会の多くの問題には「マッチング」という側面があります。今回は様々なマッチング問題の数理的性質を研究する経済学の「マッチング理論」と社会制度設計への応用についてお話しします。いわゆる「安定結婚問題」の名でご存知の方も多いかもしれませんが、前提知識を仮定せず基本の話からはじめ、後半では私の研究も絡めつつ経済学への応用と、そのための理論的発展にどのようなものがあるのかも含めてできる限りお話しするつもりでいます。

第15回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

日時:2023年7月10日(月)17:00--18:00
場所:東京大学 本郷キャンパス 工学部6号館 3階 セミナー室AD

講演者

金子 めぐみ先生(国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系)

講演題目

次世代通信システムのための無線資源とエネルギー資源の利用最適化

講演概要

世界中で移動体通信加入者や,物と物が直接無線で通信するInternet of Things (IoT) デバイス数が急増し,モバイルデータ量の爆発的な増加が予想されています.その一方で,無線資源である使用可能な周波数は既に限界を迎えていて,今後の膨大なデータ量通信に対応しきれない厳しい状況になっています.また,Beyond 5G(B5G)以降では, エネルギー利用効率が新たな重要業績評価指標として世界中で認識され,B5G無線通信システムには多様な要求(高速伝送・低遅延・高信頼・多数接続等)を高レベルで同時達成することが求められています.次世代無線ネットワーク設計に向けて, 数理最適化や機械学習を活用した無線資源割り当てや無線アクセス方式を主に研究しています.本講演ではその内容について紹介いたします.

第14回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2023年2月27日(月)17:00-18:00
zoomによるオンライン開催

講演者

瀬川 悦生 先生(横浜国立大学 環境情報研究院)

講演題目

固定点に収束する量子ウォークで駆動する量子探索の提案

講演概要

従来の幾つかのクラスにおける頂点数 N のグラフ上の摂動頂点の存在確率は, N が十分大きいときに, O(N) の時刻で観測をすると,高い存在確率を得られる一方で,その観測の 時期を逸すると,ほとんど見つけられない場合がある.これは,ほぼ周期 O(N) のタイミングで高い発見確率を得る状態がやってくることに起因する. そこで本研究では,有限グラフの外部から流出入のある半無限系の量子ウォーク力学系モデルを提案する. この量子ウォークモデルは,固定点に収束することを示し,その定常状態を特徴づける. さらに,その収束する時間を評価できる場合もあるので,それを紹介する. この研究はMohamed Sabri氏(東北大学),樋口雄介氏(学習院大学)との共同研究である.

第13回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2022年12月21日(水)17:00-18:00
zoomによるオンライン開催

講演者

谷口 隆晴 先生(神戸大学 大学院 システム情報学研究科 計算科学専攻)

講演題目

ニューラルシンプレクティック形式とそれに対する変分的数値積分法

講演概要

近年,深層学習を用いて物理現象に関する観測データから,物理モデルを構築す る手法が注目されている.代表的な研究としては,ハミルトニアンニューラル ネットワークが知られているが,この手法では,モデル化対象の現象がハミルト ン方程式に従うと仮定し,そのハミルトニアンをデータから学習する.この手法 では,古典物理学における基礎方程式を利用することで,エネルギー保存則や運 動量保存則などの物理法則を保つモデルが導出される.一方,この方法では,一 般化座標および一般化運動量でデータが与えられると仮定されており,データが その他の座標系で与えられている場合には利用できなかった.本研究では,ハミ ルトン方程式の,座標系に依存しない幾何学的な表現をモデルに利用すること で,この問題を解決する.特に,提案手法では,ハミルトン方程式を記述するた めに必要となるシンプレクティック形式をデータから学習する必要があるが,学 習された2形式がシンプレクティック形式となることを保証するための工夫につ いて説明する.また,学習されたモデルを用いて物理シミュレーションを行うた めには,保存則などを保った数値計算手法が有効である.そこで,そのような手 法として,変分的数値積分法(variational integrator)の導出法についても説 明する. 本研究は,陳鈺涵(神戸大学)および松原崇(大阪大学)との共同研究である.

第12回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2022年11月7日(月)17:00-18:00
zoomによるオンライン開催

講演者

澤 正憲 先生(神戸大学 大学院システム情報学研究科 情報科学専攻)

講演題目

Quadrature公式の理論と実験計画法への応用

講演概要

実験計画法において,「丸い」実験領域の表面や内部で定められた関数の積分値を推定するために, 与えられた標本サイズのもとで,観測点が原点から等距離にある rotatable design を用いる研究領域がある. Rotatable designやその類似概念は,数値解析学の求積公式(quadrature)や 組合せ論のEuclidean designの研究領域においても古くから調べられている. 本講演では,求積公式の構成理論に焦点を当て,これを概観しながら, rotatable designなどの種々の実験計画を求積公式の枠組みで数理的に扱う意義について考えたい.

第11回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2022年6月17日(金)17:10-18:10
zoomによるオンライン開催

講演者

合田 隆 先生(東京大学大学院 工学系研究科 システム創成学専攻)

講演題目

入れ子型期待値: マルチレベルモンテカルロ法による効率的推定と諸問題への応用

講演概要

ある確率変数についての期待値を考える時,他の確率変数についての期待値が内在することがある.このような量を「入れ子型期待値(nested expectation)」 と呼び,大域的感度分析,不確実性下の意思決定問題,ベイズ実験計画法など様々な問題に登場することが知られている.内側・外側の期待値をそれぞれ通常のモンテカルロ法によって近似するのが素朴な推定方法であるが,必要な計算量 を大幅に低減するための手段としてマルチレベルモンテカルロ法の応用が進んで いる.本講演では,一般的な形式で与えられる入れ子型期待値に対するマルチレ ベルモンテカルロ推定量を導入したのちに,本講演者が取り組んだ諸問題に対す る理論および実験結果を示す.最後に,パラメタライズされた入れ子型期待値の最小化問題を考え,その具体例であるベイズ実験計画法の最適化問題を通じて,マルチレベルモンテカルロ法による勾配の不偏推定(確率的勾配法との組み合わ せ)とその有効性について議論する.

第10回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2022年3月18日(金)17:00-18:00
zoomによるオンライン開催

講演者

池 祐一 先生(東京大学大学院 情報理工学系研究科 附属情報理工学教育研究センター)

講演題目

位相的データ解析と機械学習

講演概要

位相的データ解析 (TDA) はデータの「形」をトポロジーの考え方を用いて抽出する手法であり,物質科学や画像解析などに広く応用されつつある.最近はTDAと機械学習を組み合わせる取り組みが盛んであり,トポロジー情報を盛り込んだ損失関数の設計やトポロジー情報のベクトル化の学習法などが研究されている.本講演では,TDAに基づくニューラルネットワークの情報抽出やTDA的損失関数などに関わる最近の進展を紹介する.

第9回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2022年2月22日(火)17:00-18:00
zoomによるオンライン開催

講演者

星 健夫 先生 (鳥取大学大学院・工学研究科機械宇宙工学専攻・応用数理工学講座 / 高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所・低速陽電子実験施設)

講演題目

超並列アルゴリズムによる計測インフォマティクスの数理的革新

講演概要

我々は,先端計測むけ実験データ解析プログラム「2DMAT」 (https://www.pasums.issp.u-tokyo.ac.jp/2dmat/)の開発と応用を行っており,数理的視点から俯瞰する. 実験データ解析では,実験装置・条件由来の不確かさ(uncertainty)を,陽に扱うことが本質となる. 一方,現・次世代計算機は並列計算機であり,並列アルゴリズムを導入することで, 高速高信頼(高信頼性が担保された高速)データ解析が実現できる. 本講演では,KEKで近年実用化された, 2次元的(原子数層の厚みしか持たない極薄膜)物質むけ構造決定法である, 全反射高速陽電子回折法(TRHEPD,トレプト)を取り上げる. 具体的には,分散共分散行列の固有値問題による感度解析, 超並列(ポピューレーションアニーリング型)モンテカルロ法を用いたベイズ事後確率分布計算, 基盤となる高速計算技術,などを紹介する.

第8回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2021年10月25日(月)17:00-18:00
zoomによるオンライン開催

講演者

高橋 昂 先生(東京大学大学院 理学系研究科 附属知の物理学研究センター)

講演題目

ブートストラップ法の計算・理論に対する統計物理学的アプローチ

講演概要

ブートストラップ法とは、統計的推定の問題に関し、推定量の統計的なばらつきを手元のデータが表す経験分布を用いて近似評価する計算機統計学の手法である。経験分布からのサンプリングは容易なので、サンプリングと推定を繰り返し行うことで、推定量の統計性に関する事前知識なしに、ほぼ任意の統計的推定の問題に適用できる顕著な性質がある。一方で、推定を繰り返すことに伴い計算量が増加する、経験分布を用いた評価の実際的な有用性を理論評価することが難しいといった困難がある。本講演では、線形モデルの変数選択への応用を例にとり、これらの問題に対する統計物理学のレプリカ法を用いた研究を紹介する。

第7回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2021年6月21日(月)17:00-18:00
zoomによるオンライン開催

講演者

町田 学 先生(浜松医科大学)

講演題目

逆級数を用いた逆問題解法による光トモグラフィー

講演概要

光トモグラフィーは近赤外線を用いるイメージング技術です. 医用イメージングとしては,放射線を使わないので被曝の心配がないこと, X線CTやMRIのような大きな装置が必要ないこと,機能情報が取得できる, という特徴があります.一方で,近赤外線が生体中で多重散乱することを 反映して,非常に非適切な逆問題を解くことになります.この逆問題は 通常は反復法によって解かれます.本講演では,未知数を与える逆級数を 考え,反復せずに高速に断層画像を得るための,光トモグラフィーの 数値手法を紹介します.

第6回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2021年3月26日(金)17:00-18:00 
zoomによるオンライン開催

講演者

清水 昭伸 先生(東京農工大学 工学研究院)

講演題目

人体臓器の計算解剖モデル

講演概要

人体の臓器の統計的変動を表現した数理モデルは計算解剖モデル(computational anatomy model)と呼ばれる.本講演の前半は,形の変動に注目した計算解剖モデルについて紹介する.成人の臓器のように,トポロジーの変化がほぼ無い場合には,微分同相写像を用いてモデル化を行う方法が良く用いられる.しかし,受精して数週間後のヒト胚子の臓器のようにトポロジーが変化する場合には,その変化に対応可能な方法が求められる.そこで,符号付距離関数(レベルセット)を用いた,トポロジーの変化を表現可能な人体臓器の計算解剖モデルについて紹介する.本講演の後半では,画像の濃度値の統計的変動を深層ネットワークにより直接モデル化する方法について紹介する.血管のような細長い臓器の場合には,モデル化の結果がボケたり千切れたりするなど,不自然になることがある.そこで,Persistent Homologyを用いてトポロジー制約を与える方法などについて紹介する.

第5回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2020年11月24日(火)17:00-18:00 
zoomによるオンライン開催

講演者

宮路 智行 先生(京都大学 数学教室)

講演題目

非線形・非平衡系におけるビリヤード問題について

講演概要

非線形・非平衡現象によって駆動力を獲得するある種の自己駆動粒子を有界領域に閉じ込めると,ビリヤード球のように領域内部での直進と境界での反射を繰り返す.しかし,境界に衝突せずに反射して,入射角よりも反射角の方が大きくなるなど,完全弾性反射に基づく数学的ビリヤード問題とは異なる性質をもつ.そのため粒子が描く軌道も数学的ビリヤード問題とは異なるものになる.本講演では水面に浮かぶ樟脳円板の数理モデルを通して,その運動の性質と長方形領域における軌道について力学系の分岐の観点から議論する.

第4回 東京大学数理情報学談話会 (開催案内PDFファイル

日時・場所

2020年9月15日(火)17:00-18:00 
zoomによるオンライン開催

講演者

竹内 一郎 先生(名古屋工業大学)

講演題目

パラメトリック計画法に基づく検出力の高い選択的推論法(More Powerful Selective Inference by Parametric Programming)

講演概要

研究対象のデータを機械学習などのアルゴリズムで分析して新たな仮説を発見する枠組はデータ駆動型科学と呼ばれている.データ駆動仮説を評価するアプローチとして,近年,条件付き推論に基づく選択的推論(Selective Inference)と呼ばれる枠組が注目されている.選択的推論では,仮説が選択されるイベントを条件づけて統計的推測を行うことにより仮説選択バイアスの排除を可能としている.Leeら(Annals of Statistics, 2016)により提案された多面体に基づく選択的推論のアルゴリズムは,本来は不必要な条件で過度に条件付ける必要があり(over-conditioning),検出力が低くなる問題点があった.本研究ではパラメトリック計画法(parametric programming)を用いることによりover-conditioningの問題を回避し,従来のアプローチよりも検出力の高い選択的推論が可能となった.講演では,パラメトリック計画法による選択的推論をLASSOによる特徴選択と動的計画法による変化点検出の問題に適用した結果を紹介する.
【参考文献】
  1. Duy N.L.V and Takeuchi I. Parametric Programming Approach for More Powerful and General Lasso Selective Inference. arXiv:2004.09749 (2020), https://arxiv.org/abs/2004.09749.
  2. Duy N.L.V., Toda H., Sugiyama R. and Takeuchi I. Computing Valid $p$-value for Optimal Changepoint by Selective Inference using Dynamic Programming. arXiv:2002.09132 (2020), https://arxiv.org/abs/2002.09132.

第3回 東京大学数理情報学談話会(開催案内PDFファイル

日時・場所

2020年1月7日(火)17:00-18:00 工学部6号館3階セミナー室AD(交通アクセス

講演者

清水 佳奈 先生(早稲田大学基幹理工学部)

講演題目

簡潔データ構造を用いた秘密計算の高速化

講演概要

入力を隠したまま計算を行う秘密計算では,目的とする計算や選択する秘密計算の方式によって膨大な計算量や通信量を要する場合があり,実問題への応用を困難にしている.そのため,それらを考慮したアルゴリズムの設計が重要となる.本講演では,入力データの情報量の下限に近い大きさで索引を作ることのできる簡潔データ構造を利用し,秘密計算による文字列検索や木構造検索を高速化する手法について紹介する.

第2回 東京大学数理情報学談話会(開催案内PDFファイル

日時・場所

2019年11月26日(火)17:00-18:00 工学部6号館3階セミナー室AD(交通アクセス

講演者

渡辺 澄夫 先生(東京工業大学情報理工学院)

講演題目

ガウス近似できない事後分布の漸近挙動について

講演概要

統計モデルが階層構造や隠れ変数を含む場合には 事後分布をガウス関数で近似することができないため、 モデルの選択や検定を行うための統計学的な基礎を 構成することが困難であった。この講演では、事後分布 がガウス近似できない場合でも適用できる数学的基礎と して特異点解消・超関数の漸近展開・経験過程を説明し、 その帰結として導出される周辺尤度と予測対数尤度の 漸近挙動とを紹介する。

第1回 東京大学数理情報学談話会(開催案内PDFファイル

日時・場所

2019年7月3日(水)17:00-18:00 工学部6号館3階セミナー室AD(交通アクセス

講演者

鍛冶 静雄 先生(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)

講演題目

かたちの線型代数・微積分

講演概要

画像処理では、画像を二次元の格子グラフ上の関数とみなし、その関数を線型代数や微積の道具立てを用いて料理する。同様に、3次元空間内の形状は、グラフやより一般に単体複体上の関数とみなすことで、やはり線型代数やベクトル解析を用いて処理することができる。本講演では、形状処理、特にかたちの変形について、この観点からの研究を紹介したい。
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