東京大学を中心とした研究チーム
10ギガビットネットワークを利用したインターネット速度記録を完結
-IPv6の性能実証と、全クラスの最終速度記録を達成-

 東京大学を中心とした研究チームが、10ギガビットネットワークにおける全クラスでの最終速度記録を達成した。


東京大学情報理工学系研究科 教授 平木 敬/准教授 稲葉 真理/助教 菅原 豊
コンピュータ科学専攻修士2年 吉野 剛史
東京大学理学系研究科 講師 玉造 潤史
東京大学情報基盤センター 准教授 加藤 朗

 東京大学、WIDEプロジェクト、JGN2(NICT)、NTTコミュニケーションズ(株)と国内外のネットワーク機関、企業による国際共同研究チームは、長距離データ共有システム研究の一環として長距離TCP通信の性能研究を2004年から実施してきました。その成果として、2004年11月に日本の研究チームとして初めてインターネット速度記録を達成して以来、これまで8回にわたって記録を更新してまいりました。このたび、4月24日に米国ワシントンで開催されたInternet2 Spring Meetingにおいて、昨年12月に行ったIPv6の2件のインターネット速度記録(10Gbpsネットワークの99%を利用したTCP通信)が認定されました。これにより、本研究チームは、2006年2月のIPv4のインターネット速度記録(10Gbpsネットワークの98%を利用したTCP通信)とあわせ、10ギガビットネットワークにおける全クラスでの最終記録を達成したことになります。本成果は、東京大学データレゼボワール/GRAPE-DRプロジェクトが、代表機関として研究を実施している文部科学省科学技術振興調整費によるものです。

 今回の高速化の達成は、東京大学が開発したレイヤ間協調技術およびゼロコピーTCP技術を複合した結果、可能となりました。2006年12月30日に、30,000 km(実際には32,372 km)のネットワーク上で 7.67 Gbpsのデータ転送速度、 230,100 terabit-meters per second (Tb-m/s)の距離バンド幅積を実現し、次いで翌31日に、同じネットワーク上で9.08 Gbpsのデータ転送速度 272,400 terabit-meters per second (Tb-m/s)の距離バンド幅積を実現しました。これは、本研究チームが保持していたIPv6 のインターネット速度記録を、それぞれ約10.2%、30.4%更新したものであり、また10ギガビットネットワークを用いた最終のIPv6インターネット速度記録となりました。

 この結果、IPv6インターネット速度記録は、昨年達成したIPv4 の記録を上回ることになりました。これは、IPv6 の方がIPv4よりも性能が良いということを示すものではありませんが、IPv6 も IPv4 と同等の性能が得られることを実証したことになり、記録達成とともに大きな反響を呼んでいます。また、IPv4およびIPv6の合計4種目全てのインターネット速度記録は、日本を中心とした本研究チームが引き続き保持しています。

 この記録に関して特筆すべきことは、以下の通りであり、日本の高速インターネット技術、IPv6技術が世界の最高レベルであることを、具体的な形として示しています。

(1) 10ギガビット広域ネットワークバンド幅(9.1ギガビット/秒)の99%を利用する高効率TCP通信が30,000Kmを超す長距離10ギガビットネットワークで実現し、将来の超高速インターネット利用に道を開きました。
(2) 記録達成のためのシステムは通常のPCであり、そのオペレーティングシステムに、Linuxオペレーティングシステム、両端に設置したサーバのネットワークインタフェースカードにはチェルシオ社製S310を用いました。これらのシステムは特殊なものではなく、一般的に入手可能なものであり、今回記録を実現した技術は広く利用可能となります。
(3) 9.08Gbpsのデータ転送速度は、10ギガビットネットワークを用いる事実上の上限性能であり、次の性能向上には長距離ネットワークの40ギガビット化などが必要です。
(4) 本記録達成に用いられたネットワークは、WIDEプロジェクトやJGN2などの日本の学術ネットワーク、および主要各国の先端的学術ネットワークが参加するGLIFの枠組みによって提供され、これら国内外の学術ネットワークの、相互接続や運用調整に関する密接な連携によってもたらされました。
ISTyくん