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2020/01/31

情報関連科学技術の教育研究に関する実効性のある施策の実施に向けた提言
(令和2年1月31日 8大学情報系研究科長会議)

 8大学情報系研究科長会議では、「情報関連科学技術の教育研究に関する実効性のある
施策の実施に向けた提言」をとりまとめ、文部科学大臣に提出するとともに、初等中等教
育局長、科学技術・学術政策局長、研究振興局長及び高等教育局長に手交しました。
情報関連科学技術の教育研究に関する実効性のある施策の実施に向けた提言

令和2年1月31日

情報関連科学技術の教育研究に関する実効性のある施策の実施に向けた提言

8大学情報系研究科長会議

北海道大学大学院情報科学研究院長        北  裕幸

東北大学大学院情報科学研究科長         中尾 光之

東京大学大学院情報理工学系研究科長       石川 正俊

東京工業大学情報理工学院長           横田 治夫

名古屋大学大学院情報学研究科長         村瀬  洋

京都大学大学院情報学研究科長          中村 佳正

大阪大学大学院情報科学研究科長         村田 正幸

九州大学大学院システム情報科学研究院長・学府長 白谷 正治

現在、情報関連科学技術の急速な進展は、社会や産業の構造自体の変革をも促している。国の科学技術基本計画の中でも、超スマート社会(Society5.0)や第4次産業革命等が標榜され、数理、データサイエンス、AI、システム構築技術、サイバーセキュリティ等をはじめとして、あらゆる学術分野への応用も含めて幅広い情報科学に関連する技術開発並びに人材育成の必要性が叫ばれている。
  このことは、科学技術の基本的な構造が、真理の探究に加えて、価値の創造が重要な意味を持つ時代となって、要素還元的な視点に加え、情報システムの創造や統合化の視点の積極的な導入が必要であることを示している。情報に関連する科学技術の進展には、こういった基本構造の変化に対する理解が不可欠であり、これに適合した教育研究の組織作りが必要である。
  政府の未来投資会議、総合科学技術・イノベーション会議、文部科学省の会議では、情報教育の重要性が何度となく提起され、その中で、社会のニーズに対応した人材育成の取組と大学等におけるAIITに関連する分野における専門人材の育成機能の強化並びに研究開発環境の基盤整備とともに世界をリードする関連研究を推進することがうたわれている。
  また、ここ34年、情報関連の学部並びに大学院修士の志望者の急速な増加が顕著となり、加えて情報系でない学生からの情報関連講義の受講希望も急速に増加しており、国立大学の適正な規模が大学改革の論点となる中で、各大学とも早急な対応が必要な状態に至っている。
  そこで、8大学情報系研究科長会議から、情報関連科学技術に関する教育・研究に対して、次の時代に向けた提言をまとめ、その実施をここに強く要望するものである。

1.情報教育の強化

 政府の関係諸会議、経済団体の提言、情報処理推進機構(IPA)の調査等では、IT人材、AI人材の不足が指摘されている。「AI戦略 2019」(令和元年611日 統合イノベーション戦略推進会議決定)では、具体目標として、文理を問わず、全ての学生(年間約50万人)が初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得、さらに、一定規模の学生(年間約25万人)が自らの専門分野への数理・データサイエンス・AIの応用基礎力を習得することが明記されるなど、過去にない規模での人材の輩出が必要とされ、その実施が計画されている。しかしながら、現状の学生定員の分布、必要となる教員数、学生の年次進行も考慮した教育改革に要する期間等の観点から、現実的な工程が示されておらず、目標の実現には今までにない施策の提案が必要である。
  すなわち、情報教育強化を実現するため、教育の改革に必要となる教員数、学生の分布、カリキュラムの設計、学年進行を考慮した現実的な教育プロセスの設計が必要であり、かつ、教育する学生の修得すべきスキルもそれぞれの分野の中で合理的に設定されることが肝要かつ急務であり、それらは教育現場で実装可能でなければならない。設定されている目標値の達成には、その設計要員として、また実際の教育の実施要員として、関連教員の増強が必要であり、それと連動した形での学部学生並びに大学院学生の定員の増強が必要である。
  情報関連分野の深化・拡大にも目を向ければ、より幅広い分野で、同様の教育実装の現実的プランが必要である。

2.情報教育体系の整備

 一方で、初等中等教育における情報教育を視野に入れ、入試改革も含めた高大接続の積極的かつ建設的な設計を実現し、高等教育へ適切に接続された教育の体系が必要である。また、学部教育、大学院修士課程、同博士課程、社会人再教育(リカレント教育)に対して年次進行を配慮して体系化するとともに、関連分野の急速な進展に対応するための促進策の設計と実施が求められる。
  さらには、初等中等教育から社会人教育まで、輩出する人数から逆算される指導教員の量的・質的な不足は明白であるため、その実現可能な増強計画も設計・実施する必要がある。これには教育の階層性と高度化(指導者を輩出する教育)は必須であり、その意味での大学院教育の強化も必須となる。

3.社会と連携した教育の実施

 仮に上述した教育が実現され、想定される人材が輩出されたとしても、受け入れる社会において人材の有効活用が図られる必要があり、そのためには社会の意識改革や管理職人材に対する再教育が必要となる。つまり、企業教育も同時に実施する必要があり、その効率化のためには、高等教育から輩出される人材が受ける教育と等価な教育を社会教育基盤として整備する必要がある。
  加えて、学部と大学院修士はもちろんのこと、博士課程に進学する人材の増加は必須であり、その人材の積極的な活用が必要である。このためには、長期の実務型研究インターンシップの導入や企業との共同研究への博士課程学生の参画等の取組を通して、教育研究の実践と高度化、経済的支援の拡充を図ることが有効であり、社会からの教育資金が何らかの形で大学に直接投下される構造の設計や税制優遇等も含めた政策誘導が必要である。

4.情報関連研究開発環境の整備と世界をリードする情報関連研究開発の強化

 一方、世界的視野から見て、情報関連研究開発の強化は喫緊の課題であり、諸外国の関連分野への積極的研究開発投資は、かつて類を見ない規模で進んでおり、我が国においても量的、質的な研究環境並びに研究レベルの確保が必要である。そのためには、実効性の高い情報関連研究プロジェクトの実施が必要であり、世界をリードする研究開発を実施し、そのような活動に学生が主体的に参加することによって世界トップレベルの人材育成を推進する体制が求められる。

5.情報教育強化に繋がる施策の提案と実現に向けた検討への協力

 上述した提言を実現するため、教育現場に密着した設計を実現する必要があり、そのための検討組織を早急に設立し、活動を開始することが必要である。その活動に対して、8大学情報系研究科は、先頭に立って尽力したいと考えている。

ISTyくん