地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所(神奈川県海老名市、理事長 北森 武彦)の高森 翔 研究員らは、国立大学法人東京大学(東京都文京区本郷、総長 藤井 輝夫)の竹内 昌治 教授と、大杉 美穂 教授、国立研究開発法人理化学研究所(埼玉県和光市、理事長 五神 真)の新冨 圭史 専任研究員らと共同で、脂質二重膜からなる人工細胞モデルであるリポソームの内部に細胞核を構築することに成功しました。
細胞核のリポソーム内形成
近年、細胞を模倣した構造や機能を持った人工細胞を実験室でボトムアップ構築する研究(ボトムアップ合成生物学)が注目されています。中でも、真核細胞の遺伝情報の保持・発現を担う「細胞核」の構築は大きな課題でした。これまで、細胞核の構築は主にアフリカツメガエル卵の抽出液を用いて試験管内や油中水滴内で行われていましたが、リポソーム内での構築は達成されていませんでした。
研究チームは、リポソームの内部において細胞核の構築に世界で初めて成功しました。カエル卵抽出液をリポソーム内に封入し、そこに精子由来のDNAを添加することで、DNAを包み込む核膜を形成しました。さらに、核膜孔複合体の形成や、それを介したタンパク質の核内への能動輸送を顕微鏡下で観察し、構造だけでなく機能も備えた人工細胞核の構築を実証しました。本研究成果は、従来困難とされてきたリポソーム内での核構築を可能とするものであり、ボトムアップ合成生物学の分野において、真核細胞に近い人工細胞構築の道を開く画期的なステップとして位置づけられます。
本研究成果は、2025年5月20日(火)(米国時間)に米国WILEY社から出版されるSmall誌に掲載されました。
この研究成果についての詳細は【プレスリリース_20250520】をご覧下さい。
雑誌名:Small
題名:Nuclear assembly in giant unilamellar vesicles encapsulating Xenopus egg extract
題名:Sho Takamori, Hisatoshi Mimura, Toshihisa Osaki, Tomo Kondo, Miyuki Shintomi, Keishi Shintomi, Miho Ohsugi, and Shoji Takeuchi
DOI:10.1002/smll.202412126
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