東大とトヨタ、富士通研究所、松下など7社
ITとロボット技術の融合「IRT」で新産業
日本発の技術でイノベーションを目指す
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 情報技術(IT)とロボット技術(RT)を融合させて、新たな産業を創り出す挑戦的な産学協働プロジェクトが始まった。東京大学とトヨタ自動車、富士通研究所、松下電器産業など企業7社が連携し、少子高齢化社会に備えて、掃除、食器の片付けなど、人の生活を積極的にサポートするロボットシステムを開発する。期間は10年の長期にわたり、自動車、コンピューターに次ぐ1兆円という巨大産業の創出を目指す。

IRTを軸に産学が結束 IRTを軸に産学が結束

 このプロジェクトは、文部科学省の先端融合領域研究の一環として推進するもので、ITとロボット技術を融合したIRTにより少子高齢社会と人を支える技術を生み出し、新産業づくりを目指す壮大な計画である。文部科学省の科学技術振興調整費と企業の拠出による初年度約5億円の研究費で、当初3年間の研究をスタートした。産学併せて約100人の研究者が参加し、東大本郷キャンパスに置いた研究拠点に設備を導入し、共同利用する。

IRTプロジェクトにマスコミも強い関心 IRTプロジェクトにマスコミも強い関心

 参加したのは、トヨタ自動車、オリンパス、セガ、凸版印刷、富士通研究所、松下電器産業、三菱重工業の7社。

 10年計画では、(1)人の仕事を助ける「ヒューマノイドロボット技術」、(2)情報インフラや健康支援など、一人ひとりにサービスを提供する「社会・生活支援システム」、(3)人の移動の自由度を向上させる「パーソナルモビリティ」の3つのプラットフォーム技術を軸にして研究開発のロードマップを描いている。

 具体的には、2009年までの3年間で、食器洗い、後片付け、東大構内を移動できるロボットの開発を行う。2011年ごろまでに、ベッドメーキングロボットや診断治療用内視鏡の実用化を、2016年ごろには、抱きかかえ介助ができるロボット、高齢者が横断歩道でも安全に渡れる移動用ロボットなどを実現する考えだ。

小宮山総長がプロジェクトの意義を披露 小宮山総長がプロジェクトの意義を披露

 8月上旬、都内のホテルで発足式を開いた。マスコミ関係者およそ30人が参加し、関心の高さを示した。発足式でプロジェクトの総括責任者、小宮山宏東大総長は「IRTプロジェクトは、少子高齢社会における生活の質を本質的に高めるもの。“東大の知”と“産業界の技術力”を融合して実現し、併せて新産業の創出を目指す」とプロジェクトの持つメッセージを強調した。少子高齢社会、エネルギー、環境など解決を要する緊急かつ重要な課題は、日本に先進的に現れる。このうち、少子高齢社会に日本はどのように対応し、新しい社会を構築していくか、その答えを発信していく実力があると持論をもとに展開した。

200人近い研究者らが後押し(発足式後のパーティーで) 200人近い研究者らが後押し(発足式後のパーティーで)

 同プロジェクトは、従来のような大学と企業1社が組んで共同研究するスタイルではない。東大の持つロボット技術群と企業が得意とする技術を融合し、ロードマップで描いた製品を3つのプラットフォームに沿って実現して社会に提供していくことにある。言い換えれば、東大の技術にトヨタのロボット機構・移動技術、オリンパスのセンサー技術、凸版印刷のコンテンツ技術、松下電器のデジタル技術などを融合して、これまでに実現していない高齢化社会にマッチした新技術とシステムをつくり上げる。こうした仕組みがIRTプロジェクトの最大の特徴である。

IRTプロジェクト体制図
IRTプロジェクト体制図

IRTプロジェクトホームページ: http://www.irt.i.u-tokyo.ac.jp/index.shtml

「いまなぜ、IRTプロジェクトですか」知能機械情報学専攻の下山勲教授に聞いた。少子高齢社会にマッチした
多彩なロボットシステムをつくりたい 東京大学と産業界が連携して動き出したIRTプロジェクト。日本が世界をリードするロボット技術とITを融合したこのプロジェクトの意義は何か。キーマンの情報理工学系研究科知能機械情報学専攻の下山勲教授に聞いた。→ 「ニュースフォーカス」 情報理工学系研究科知能機械情報学専攻
下山勲教授
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