プレスリリース

2026/06/09

昆虫の嗅覚を利用し、尿の“におい成分”を細胞で読み取る
~がん関連揮発性物質候補を検出するバイオハイブリッド型匂いセンサを開発~

神奈川県立産業技術総合研究所の三村久敏 研究員、大崎寿久 サブリーダー、東京大学大学院情報理工学系研究科の竹内昌治 教授(同大学生産技術研究所学内クロスアポイント特任教授)、住友化学株式会社の高橋康彦 統括研究員らの共同研究グループは、昆虫が匂いを感じる仕組みを利用し、尿に含まれる揮発性の“におい成分”を細胞で検出するバイオハイブリッド型匂いセンサを開発しました。本研究では、尿中に添加したがん関連揮発性物質候補を、ヘキサン抽出と気相曝露を組み合わせて検出できることを示しました。

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図:尿中の“におい成分”を細胞で検出する仕組み

尿は体への負担が少なく簡便に採取できるため、疾患バイオマーカー検査の対象として注目されています。近年、尿中に含まれる揮発性有機化合物(VOC)が、がんなどの疾患バイオマーカー候補として報告されています。しかし、尿のような複雑な生体試料中から特定の揮発性物質を高感度かつ選択的に検出することは容易ではありません。また、従来研究が行われてきた細胞型匂いセンサでは、細胞ごとの応答のばらつきや信号の弱さが課題でした。

共同研究グループは今回、昆虫由来の嗅覚受容体を発現した複数種類の培養細胞をハイドロゲル中に高密度に封入し、独自開発したマイクロウェルプレート上に配置することで、細胞型マルチセンサアレイを開発しました。この構造により、従来課題であった細胞応答のばらつきや信号の弱さを抑え、安定した蛍光応答を得ることが可能になりました。さらに、ヘキサンを用いて尿中の揮発性成分を抽出し、抽出した成分を気化させ、センサ細胞に曝露することで、尿中に添加した、がん関連揮発性物質候補として報告されているアセトフェノンの検出に成功しました。本技術は、生体の優れた分子認識能力を利用したバイオハイブリッド型匂いセンサとして、将来的に体への負担が少ないバイオマーカー検査技術への応用が期待されます。

本成果は、JST 戦略的創造研究推進事業CREST(JPMJCR20C4)の支援のもと進めてきた、「嗅覚受容体を活用したバイオハイブリッド匂いセンサ」開発の主要成果の一つです。

本研究成果は、2026年6月9日午前4時(日本時間)にアメリカ化学会の学術誌ACS Sensors にオンライン掲載されました。

研究成果についての詳細は【情報理工_プレスリリース_20260609】をご覧下さい。

論文情報

雑誌名:ACS Sensors
題 名:Cell-based multisensor array for vapor-phase detection of cancer-related compounds in human urine
著者名:H. Mimura, T. Osaki, H. Oda, S. Takamori, Y. Kodama, N. Sasaoka, Y. Takahashi, and S. Takeuchi
DOI:10.1021/acssensors.5c04942
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssensors.5c04942

ISTyくん