米澤明憲教授が『紫綬褒章』を受章
並列オブジェクト指向技術の業績で

 米澤明憲教授(情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻、理学部情報科学科、情報基盤センター長)が平成21年秋の紫綬褒章を受章した。

 紫綬褒章は、学術・芸術・スポーツで著しい業績を上げた人を対象とした褒章で、米澤教授は、情報科学分野において、長年にわたり新たなソフトウェアシステムの基礎理論の研究と実践に努め、複数のCPUで同時に情報処理する「並列オブジェクト」に基づく計算モデルとプログラミング言語の研究、モバイルオブジェクトやセキュアコンピューティングの研究など国際的に高く評価される研究成果を収められた。

 米澤教授が拓いた並列オブジェクト指向技術については、この技術の先駆的な理論と応用展開に指導的な役割を果たした業績が認められ、2008年にこの研究分野で多大な貢献をした研究者・実践者に贈られる国際的な賞「ダール・ニゴール賞」が、日本はもとより、アジアの研究者として初めて授与されている。

 最近では、並列オブジェクト指向技術が普及し、海外の携帯電話網の運用・制御ソフトウェアや地下鉄の運行・制御ソフトウェア開発に用いられているほか、米国イリノイ大学で並列オブジェクト指向言語Charm++で記述したスーパーコンピュータ向けの代表的アプリケーションNAMD(分子動力学シミュレータ)が開発され、新型ウイルスの抗体解析などに用いられている。Charm++で記述したアプリケーションは、米国の2つの主要スパコンセンターが保有している計算資源の20%を占めるほどウエートを高めている。

 さらに、並列オブジェクト指向技術は、利用者同士が“つぶやき”と呼ばれる短いメッセージを互いに送り合う通信サービス「Twitter」でも利用されている。「Twitter」は、速報性の面から新たなメディアとして期待されているが、そのためには、大量のつぶやき情報をリアルタイムに処理する必要がある。この課題を並列オブジェクトプログラミングによって解決されている。

 今回の受章は、米澤教授の長年にわたる並列オブジェクト指向技術に対する理論から実践に至る優れた業績と、科学技術に対する多大な貢献が高く評価されたものである。

ISTyくん