置き忘れた眼鏡のありかを教えてくれます
――東大IRT研究機構がロボット技術――
薬の飲み忘れ、間違いも注意する賢さも

東大IRT研究機構がロボット技術 左から、人の行動を見守るロボット、日用品を片付けるホームアシスタントロボット、人に密着して日用品を記憶する屋内用パーソナルモビリティ

 「テレビのリモコン、どこに置いたのかしら。あら、眼鏡も…」。お年寄りになると、ふだん使っているものでも、どこに置いたか忘れがち。そんなとき、あちこち探さなくても、置き忘れたモノのありかを教えてくれるロボット技術が登場した。薬の飲み忘れだってちゃんと教えてくれる優れものだ。この技術を開発したのは、東京大学IRT研究機構。高齢者が快適で健やかな生活を送れるようにというコンセプトのもと、富士通研究所、トヨタ自動車など企業の協力を得て実現した。

 物忘れは年齢とともに増える。テレビの番組を見ようと、手を伸ばしたその先に、さっき置いたはずの眼鏡が見つからないなんてことは、高齢者ならかなりの人が経験している。そうした日用品を置き忘れた場所や収納した場所、薬を服用したかどうかをヒト型と卓上型の2台のロボットとカメラの連携で教えてくれる。

 その中身は2つ。まず、室内に設置したカメラと、ロボットに搭載したカメラで、高齢者がどこかに収納した日用品や、ロボットが高齢者の指示で片づけた日用品の画像情報をデータベースにまとめておく。これを検索することによって、机の上に置いたか、棚の中か、引き出しの中にしまったかなど収納場所を見つけて表示したり、ロボットが指さしして「あそこにあるよ」と教えてくれる。また、その場所まで屋内用パーソナルモビリティで連れて行ってもらうこともできる。探している日用品が最後にいつ使われ、どこに収納されているかを教えてくれるので、高齢者にとってはとても強い味方だ。このために、記憶画像を選択するイベント検出技術、日用品を探し出す画像マッチング技術、膨大な計算を高速で行う並列分散処理技術などを活用している。

思い出し支援を実現する基盤IRT技術
思い出し支援を実現する基盤IRT技術
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 もう1つは、ロボットが高齢者の1日の動作を視覚(カメラ)で観察するので、たとえば、きょうはいつもの薬を飲んだか、まだかを記憶した画像をもとに思い出し支援をする。もし、1日1回しか飲んではいけない薬をもう一度飲もうとしたら、卓上型の見守りロボット『Mamoru』クンが両手を振りながら「飲んじゃダメ」と声で注意してくれる。このロボット、身長は40cm、体重3.8kgで、目、耳があり、声も出せる。180°の広い視野を持つ多重解像度カメラを用いて、高齢者の行動をロボットが認識したり、手先の動きを注視したり、高速処理する技術などを統合して実現した。

 IRT研究機構は、ありふれた日用品を小さな箱型のコンテナに収納し、高齢者が必要としたときにロボットとの間でコンテナを受け渡して必要なものを取り出す部屋型ロボットシステムや、高齢者が片手で簡単操作をしながら屋外や家庭内を行き来できるパーソナルモビリティを開発している。今回の思い出し支援技術研究にも、屋内用パーソナルモビリティが高齢者に密着して日用品を記憶するのに使われている。

 少子高齢社会での高齢者の健康や生きがいを支援するコア技術がそろってきたことにより、実用化を視野に入れた研究が加速しそうだ。

ISTyくん