知能機械情報学専攻の國吉康夫教授は、優れた業績を挙げた新進研究者に贈られる、今年の「東京テクノ・フォーラム21」のゴールド・メダル賞を受賞した。6月2日午後1時から、東京・虎ノ門の発明会館で受賞記念講演を行う。
ゴールド・メダル賞として評価されたのは、「人型ロボットを用いた動作の“ツボ”の解明と認知発達原理の先駆的研究」。「ツボ」や「コツ」は、複雑で大量の情報の中で何が大事かを見極め、活用する能力で、ロボットや知能システムに最も欠けている人間的な知能とみられているが、これまで科学的な解明が行われてこなかった。
國吉教授は、「ツボ」や「コツ」をできるだけ具体的かつ定量的に解明するために、身体動作を題材に研究を行った。たとえば、人が仰向けに寝た状態から両足をそろえて高く振り上げ、振り下ろしながら、一気にしゃがんだ状態まで起き上がる「跳ね起き動作」をロボットで実現しようとしても、従来型のロボット制御では実現困難である。そこで、人の動作を繰り返し計測・解析し、動作を行う試行ごとに異なる部分と、毎回必ず同じ状態を通る部分があることを発見した。さらに詳しい力学的解析を行い、接地点が尻から足に移る瞬間に、跳ね起きの成否を分ける厳しい力学的条件があることがわかった。これが「ツボ」に相当し、人は確実にその条件を満たすように動作を調節(コツ)している。
この原理を独自開発の身長1.55mの人型ロボットに適用し、跳ね起き動作を実現した。ダイナミックで技能的な全身動作を達成した人型ロボットは、世界でも例がない。「ツボ」や「コツ」は、人型の身体特性に起因する情報構造で、人の動作の賢さだけでなく、他者の振る舞いの理解にも関係することを明らかにしている。これらの成果は、力づくではなく、賢く体を使いこなして動作するロボットや、想定外の複雑な状況下で効果的な行動を発見し、臨機応変に行動するロボットなど、将来の真の知能ロボット実現に重要な原理を提供する。と同時に、人の行動や認知の発達原理に関する新たな理解を提示するものと言える。このような研究の視点と成果が高く評価されてゴールド・メダル賞が贈られた。
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