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ニュース

 2008/04/15
――日本学生のソフトウェア創造力は高い――
情報理工の院生、米企業への武者修行で証明
「企画・実装・応用力とも優れている」との評価

 「日本の学生のソフトウェア創造力は、米国学生と遜色なし」―こんな心強い結果が明らかになった。東京大学情報理工学系研究科(情報理工)の院生がITで世界の最先端を走る米国シリコンバレーの企業や大学を訪問、研修した結果、「企画・実装・応用を含め、ソフトウェア開発力はすばらしい」と予想以上に高い評価を得たからだ。日本では学生のソフトウェア創造力が不足しているといわれ、科学技術立国・日本の将来にカゲを落としかねない事態にもなっているが、これを払拭する朗報と言えるもので、引率した創造情報学専攻の竹内郁雄教授は「院生の潜在的な力、高い企画力があることがわかった。この力をもっと伸ばせるような仕組みを定着させたい」と語っている。

サン、MS、スタンフォード、UCBを訪問

 情報理工は東京工業大学、国立情報学研究所と連携し、文部科学省の「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」の一拠点として「情報理工実践プログラム」を展開している。このプログラムの中で実際にソフトウェアを開発した情報理工実践工房の院生15名が、開発成果を手に米国へ武者修行。博士課程3年から修士課程1年の院生、ソフトウェア開発で優れた才能を持つスーパークリエーターと認定された院生2名が加わった。今回の武者修行の目的は、開発したソフトウェアの評価と、院生自身の国際展開力を伸ばすことにある。訪問したのは、サン・マイクロシステムズ、マイクロソフト、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校という世界のITを先導する屈指の企業と大学。

サン・マイクロシステムズでの様子 マイクロソフトシリコンバレーオフィスの前で
サン・マイクロシステムズでの様子 マイクロソフトシリコンバレーオフィスの前で

企業技術者がアッと驚く提案も

 披露した開発ソフトウェアは8件。たとえば、「ana2ch(あなにちゃん)」。「2ちゃんねる」がインターネット掲示板として拡大し、流行や売れ筋商品のトレンドを調査するのに使われているが、「ana2ch」は情報を収集する新しい機能や、それらを統計解析するモジュールを組み込んだ新しいツールで、フリーに公開することを検討している。また、webページの好きな個所の文章を選ぶだけで、その文章の翻訳文を埋め込んで提示する「Omniget popIn」も関心が高かった。翻訳サービスを実施しているサイトと接続して行うものだ。元の文章の上に重ねて表示するポップアップ方式では、元の文章が見えなくなる不便さがあるが、今回の場合は、文章と並んで表示されるので、携帯電話のように小さな画面でも見やすい。“ポップイン”というネーミングもわかりやすいと反応もよかった。

 マイクロソフトを驚かすような成果もあった。ウインドウズでファイル保存などの通常の処理動作中に自動的に暗号化したり、バージョン管理やウイルスチェックを行ったりできるユーザー・フレンドリー・データ管理システム「Decas」がそれだ。ファイルシステムはOSの奥にあって、ユーザーが勝手に触ることができないのが普通。そこをこじ開け、マイクロソフトが提供すれば間違いなく大きな反響を呼びそうな機能を、院生が独自に着眼、実現した。

 訪問先には事前に資料を送っていたので、企業の研究者や学生からは的を射た質問が多く飛んだ。最初に訪問したサン・マイクロシステムズでは、Sun SPOTの開発責任者、ロジャー・マイク氏が「わずか4ヵ月という短期間に、企画・実装・応用のソフトウェアに関する一通りをこなし、これだけのものを開発できたのはすばらしい」と評価した。ITビジネスを先導する企業人から高い評価を受けたのは、方向性が間違っていなかったことを裏付けるものだ。最後の訪問先のカリフォルニア大学バークレー校では、時間が足りず、双方の学生が昼食をとりながらのプレゼンとなった。この場では、予定にはなかった自作プログラムの発表を即興で行うなど盛り上がり、院生の実力の高さを示す場となった。

スタンフォード大学では核心を衝く質問も UCバークレー校では直接対話が実現
スタンフォード大学では核心を衝く質問も UCバークレー校では直接対話が実現

武者修行の成果を今後の育成プログラムに生かす

 日本の産業界は、産業界のニーズにマッチしたIT人材、特に、自動車、家電、情報機器の組み込み用など、目的指向型ソフトウェアを開発する人材の育成を求めている。文部科学省の「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」も、そのような観点からの取り組みであるが、情報理工が行っている実践工房では、ソフトウェアの基礎力、開発力に加えて、“創造力を身に付けさせる”ことにも重点を置いている。実践工房の推進役を務める竹内教授は「基礎力、開発力は、教育によって身に付けさせることが可能だが、創造性を発揮させるようにするには新しい仕掛けが必要。これが院生の潜在能力を引き出すことになったのではないか」と分析する。

 その仕掛けとは―。実践工房では院生が研究テーマを自主提案。提案されたテーマは優先度に応じて絞り込みが行われ、選ばれたテーマに対し、教員と複数の院生が協力して開発チームを立ち上げ、ここに企業の研究者がアドバイザーとして参加する仕組みをつくった。そして、完成時に産業界で実際に使えるソフトウェアを視野に、それに結びつけるディテールの組み立て、プロジェクト進行管理の検討など、あらゆる面を想定してメンバー間の情報交換を繰り返し行い、きめ細かな体制を構築して実施するようにした。こうした切磋琢磨が数ヵ月という短期間で米国企業の技術者らから優れた出来栄えと評価される成果を産み出す原動力になった。産業界、文科省が挙げて模索する創造性に富むソフトウェア人材の育成に、実践工房のプログラムは重要な示唆を与えるものになりそうだ。

 「全行程通訳なしのため、語学力に自信のない院生の気後れを心配したが、まったくの杞憂だった」と竹内教授。むしろ、院生のパワーを引き出すのに極めて有効だったし、日本の学生のソフトウェアの発想力、創造力は、米国学生と比べても決して引けを取らないことを確認できたのが大きな収穫と強調する。「世界有数の米国IT企業は、スタンフォードやUCバークレーの出身者が設立したもので、潜在能力を秘めた米国学生と対等関係を築いた意味は大きい。実践工房の創造性発揮プログラムから、世界を動かすようなソフトウェアを創造する人材を輩出したい」というメッセージが実を結ぶことを期待したい。



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