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 2007/04/17
業績名:「ヘアピン構造を活用した分子コンピューティングの研究」
萩谷 昌己 はぎや まさみ
現 職  東京大学 大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 教授

ヘアピン構造を活用した分子コンピューティングの研究


業 績

 本研究以前の分子コンピューティングは、分子反応の持つ情報処理能力を十分に活用し切れておらず、非常に時間のかかる実験操作を問題の大きさに比例した回数だけ必要としていた。

 本研究は、DNAがヘアピンをはじめとする二次構造(ループ構造)を形成し解離する能力を、分子レベルの情報処理に活用する可能性を切り拓いた。具体的には、(1)ヘアピンの形成による計算、(2)ヘアピンの解離による計算、(3)ヘアピンの形成と解離の繰り返しによる計算の三種類の計算方式を開発した。

 本研究により、DNAが二次構造を形成し解離する能力を情報処理に活用することが可能となった。例えば、一連の条件を同時に満たすDNA分子を、同一の溶液内の連続した分子反応によって効率よく選択することが可能となった。

 本成果は、分子反応による汎用的な演算操作を与えており、分子反応に関連した各種の現実的な問題へ応用される可能性を有している。特に、大容量の記憶媒体(IT分野)・情報処理能力を持った分子機械(ナノテクノロジー分野)・生体内の投薬制御(バイオテクノロジー分野)に寄与することが期待される。


主要論文:
「Molecular Computation by DNA Hairpin Formation」Science誌,Vol.288, p1223-1226,2000年発表
「Hairpin-based state machine and conformational addressing: Design and experiment」Natural Computing誌,Vol.4,No.2,p103-126,2005年発表


詳 細

本研究は、DNAがヘアピンをはじめとするループ構造を形成する能力を、分子レベルの情報処理に活用する可能性を切り拓いた。具体的に以下の三つの項目から成る。

(1)ヘアピンの形成による計算
(2)ヘアピンの解離による計算
(3)ヘアピンの形成と解離の繰り返しによる計算

(1)ヘアピンの形成による計算
一本鎖のDNA分子は自分自身の中に相補配列を含んでいると、下左図にあるようにヘアピン構造を形成する。本研究では、組み合わせ最適化問題の一つであるブール式の充足可能性問題に対してDNA分子がヘアピン構造を形成する能力を応用した。具体的には、ブール式の矛盾を判定するために、ブール変数とその否定を互いに相補的な塩基配列によって符号化する。すると、ブール変数とその否定の両方を選択した場合、下右図にあるようにヘアピン構造が形成されて矛盾を認識することができる。従来手法では矛盾を検出するために変数の数と同じ回数の分離操作を必要としたが、本手法では実験操作の回数は変数の数に依存しない。(分子レベルの効率のよい情報処理)

(1)ヘアピンの形成による計算

(2)ヘアピンの解離による計算
形成とは逆に、ヘアピンの解離も情報処理に利用することができる。下図にあるように、連続したヘアピンからなる一本鎖DNA分子は、オープナと呼ばれる入力分子(これも一本鎖DNA分子)によってヘアピンを開くことにより、継続して状態遷移を行うことができる。この技術を用いて、分離操作を繰り返さずに、入力の組み合わせによって特定のDNA分子を選択することが可能になる。(分離操作の必要のないアドレシング)

(2)ヘアピンの解離による計算

(3)ヘアピンの形成と解離の繰り返しによる計算
さらに、ヘアピンの先端がポリメラーゼによって伸張する反応と組み合わせることにより、ヘアピン分子を用いて、自身に内臓されたプログラムに従って自律的に状態を遷移させる分子機械を実現することができる。この分子機械は、ヘアピンが形成され先端がポリメラーゼによって伸張すると次の状態に遷移する。ヘアピンがいったん解離することにより次の状態遷移が可能になる。(自律的に進む計算過程)

(3)ヘアピンの形成と解離の繰り返しによる計算

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