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「Khronos Projector」
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システム情報学専攻のAlvaro Cassinelli助手(石川・並木・小室研究室)が開発した作品「Khronos Projector」が注目を集めている。あらかじめ撮影した画像を手で触ることによって、新しい画像に変化させられる斬新さが受けて、コンピューターグラフィックスの展示会や美術館、芸術祭などで招待講演が相次ぎ、広告、映画産業が熱い視線を投げかけている。
Khronos Projectorの特徴は、映像で見ると、なるほどとひと目で理解できるが、文字ではその良さを伝えにくいのが残念だ。仕組みは、伸縮性のあるスクリーンに投影した風景などの画像を手で押すと、押す深さや時間によって、同じ風景の未来や過去の画像に変化させることができるものだ。スクリーンを押す深さや時間は、人によって微妙に異なるので、その人オリジナルの画像が得られるのもユニーク。
この作品は、フランスにいる画家の兄と、東京のビルなどの写真を一緒に見て楽しめるようにしたいというのが発想だった。写真や絵画はもともと2次元の情報で、止まったままだが、時間をずらすことによってまったく違った新しい画像をつくることができたらおもしろいとチャレンジした。リアルタイムで動きを認識できるビジョンチップ(石川研究室が開発)とソフトウエアでつくった画像を組み合わせて微妙な動きを実現し、2005年7月末から米国ロサンゼルスで開催されたSIGGRAPH 2005で発表したところ、大反響を呼んだ。
すでに、1000枚の画像を蓄積し、手で押したところは未来の画像を、残りは現在、過去の画像として見ることができるシステムも完成している。このシステムは、おもしろい使い方もできる。カメラで撮影中のアナタの映像がスクリーンに映し出されているとしよう。このリアルタイムの顔の一部でもアナタが触ると、アナタの顔が映っていなかった前の画像に戻る。こんな不思議な体験もできる。絵画でいえば、ピカソやダリ、ハリウッド映画では、シュワルツェネッガー主演のターミネーターに、同じような動きが見られるが、実際には、まったく異なったジャンルの画像だ。
Khronos Projectorに対し、2005年度(第9回)の文化庁メディア芸術祭のアート部門大賞が贈られた。以来、Alvaro助手は“メディア・アーティスト”と呼ばれ、同Projectorについては海外からの招待講演を含めてオファーがひっきりなし。そこで、展示会などのオペレーションは、企業に依頼することにしている。
今後は、双方向の情報通信などヒューマンインタフェースの革新的なツールとして発展させていくと同時に、広告や映画などへの実用化を視野に、高度な制御や高精度表示ができるよう深化させていきたいとAlvaro助手は語っている。
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