東京大学を3月31日をもって退職する辻井潤一教授(コンピュータ科学専攻)の最終講義が下記の日程で行われる。
辻井教授は、自然言語処理研究において、機械翻訳における先駆的な業績ならびに、深い言語解析や意味に基づくテキストマイニング手法の開発、その生命科学分野の文献への適用などで国際的に高く評価される研究成果を収めてきた。
「言葉は、人間の心の根幹にある。」辻井教授は、この言葉を計算の立場から研究する計算言語学、自然言語処理の研究に40年間従事してきた。最終講義では、研究を通して得られた、言葉の構造と意味、言葉の意味と知識に関する知見を整理し、この分野の今後についての考えを述べる、とのこと。また、先生に影響を与えた研究者との出会いや、言葉とこころのありようについての、研究を離れた感想なども話したい、とのこと。
辻井教授は京都大学に在職中、機械翻訳の国家プロジェクト(Mu)において中心的な役割を果たした後、1988年、英国UMIST(University of Manchester Institute for Science and Technology)の教授、および、同大学計算言語学センター(CCL)の所長に就任した。UMIST在職中には、ヨーロッパ連合の機械翻訳プロジェクト(Eurotra)のプログラム言語設計の中心として大きな成果を上げた。1995年、東京大学理学部情報科学科教授に就任してからは、深い言語解析手法とコーパスに基づく統計手法との融合、生命科学分野の意味付記コーパス(GENIA)構築とその利用などに顕著な成果を上げた。
2005年には、英国マンチェスター大学に設立された国立テキストマイニングセンター(NaCTeM)の初代所長として招聘され、現在は、東京大学教授であるとともに、NaCTeMの研究ディレクター、マンチェスター大学教授を兼任している。
辻井教授は、これまでの研究生活を通じて、人間の言語と意味・知識との関係を取り扱う計算機技術という難問に様々な角度から取り組み、世界の研究をリードしてきた。このような業績は国内外で高く評価されており、2009年には紫綬褒章を受章した。また、言語処理学会会長、国際計算言語学会(ACL)会長、アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)会長、国際機械翻訳協会(IAMT)会長、アジア言語処理学会連合(AFNLP)会長、情報・システム研究機構監事、高度言語情報融合フォーラム会長など、国内外の学術組織の要職を歴任している。
辻井教授のより詳しい経歴と業績については以下のwebページを参照のこと。
http://www-tsujii.is.s.u-tokyo.ac.jp/~tsujii/atlab.html
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