TOPお知らせごあいさつ募集要項カリキュラム教官リスト設備参加学生紹介イベント・レポートソフトウェア

 

- プロジェクト報告 -
情報理工産学連携ARAプログラムの活動
ARA プログラム運営委員長 石塚 満
講演資料
(この文章は当日行われた講演内容を録音したテープからおこしたものです)
司会  では、本セッションの最後ですけれども、情報理工産学連携ARAプログラムの活動ということで、同プログラムの運営委員長であります石塚満教授よりごあいさつさせていただきます。
石塚

 石塚でございます。実は、産学連携のARAプログラムのARAというのはアドバンスド・リサーチ・アシスタント・プログラムで、委員長は今、知能機械情報の井上先生ですが、私が初代の運営委員長をやったというので話させていただきます。
 情報理工学系研究科が設立されて3年目になりますけれども、当初新しい研究科を計画していた段階から、情報技術というのは単に研究だけではなく、やはり社会に使われ、役に立って初めて大きく広がっていくんだということがありまして、産学連携が社会に役立つ技術をつくっていく上で非常に大事だという認識がありました。なかなか準備に手間取ったんですけれども、研究科が設立されて1年目になりましてしてこういうARAプログラムというものをスタートさせることができました。ですから今、活動を始めて2年ということになります。今日は10分くらいですけれども、その内容についてお話をさせていただきたいと思います。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます 今まで情報技術だけとは限らないんですけれども、20世紀の産業構造というのは、日本ですと大きな会社では基礎研究から研究開発、製造、販売と、垂直型というか、基礎からビジネスまで自前でやるという形が主流になってきました。ですけれども、世の中の動きが早くなったのと、いろいろな技術要素を取り入れていち早く新しいサービスなりをしていかなければいけないということでそれでは間に合わなくなってきています。例えば製造技術は製造に特化した会社にアウトソーシングというか、任せる。それで、基礎研究というのは投資をして5年先、10年先にならないと成果が出ない。成果が出るかどうかもわからないという非常にリスクの大きいところですから、なかなか大きい会社といえども自分のところに抱えてやっていけないということで、外と協調しなければいけない。外というと、日本は今まで必ずしも十分ではなかったわけですけれども、大学がそういうところで果たす役割というものが大きいだろうということで、日本の政府も科学技術の重点政策というものを決めて、ライフサイエンスとか環境ナノと並んで情報技術というのはその一つになっていて、5年間で24兆円という基礎研究に投資しようということになっています。
 こういう大きな産業とか研究開発のフレームワークの変化というところで、大学も間もなく法人化されます。そして、産学連携というのは大事だということが大きな方針になっていますけれども、情報理工はいち早くそれに先行してこういうものに注目してプログラムを開始したわけです。
 それで、これはちょっと別の見方ですけれども、会社の中の研究開発とかビジネスの体制というのは部とか課があるいわゆる縦割りのところとか、それでは柔軟性がないというのでプロジェクトチームという形で、もう少し複数の部局から集まっていち早く動きをつくるという体制が今まであったわけですが、21世紀型というのはもう少し外部も一緒になってネットワークをつくって新しい創造的な技術をつくっていくことが必要ではないか。アメリカなどですとベンチャーなどが出てきてそういうものが活発に行われているわけですけれども、日本は必ずしも十分ではなくて、そういうところを東大の情報理工が先鞭をつける形で情報技術の分野でやっていきたいというのがこのARAプログラムの背景にある考え方です。こういうネットワーク型の情報技術の基礎のバーチャルな研究所という形の組織を運営していきたいということです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます それで、基礎と製品開発とかビジネスの間には大きなギャップがあるというのですけれども、大学はもちろん基礎をやりますが、先ほど言ったように社会に役立つ部分も生み出していかなければいけないというので、そこをつなぐ、大学の基礎をやっている研究者にとっても、実際に社会でどういうことが必要とされているかを認識するというのは非常に大事でありまして、企業から見ると必ずしも基礎研究を自前で全部やることはできないから、大学と一緒に、大学の方もニーズをちゃんと認識してくれて、ニーズに役立つような基礎をやってくれることが必要であって、それを仲介するような部分を担うというのがこのARAプログラムの考え方です。
 それで、今までの大学の産学連携との大きな違いというのは、今までは国立大学だということもありまして、産学連携の日本の国立大学の動きというのは皆、中で大学の事務などが担当をしてやったり、かなりの部分を教官がやったりしなければいけなかったわけですけれども、お金も必ずしも自由にならないとか、人手として事務職員もそう増やすわけにはいかないということで、必ずしも融通性のある運用はできない。企業から見ると、大学というのは公務員であって対応が必ずしも柔軟ではないとか、速くないとかということがあったので、このプログラムは外の株式会社に運営を委託してアウトソーシングで、お金の流れももう少し国立大学の扱う研究費などより自由にできるようにしています。特にアメリカの大学と日本と違うところは、アメリカの大学はかなりの部分、学生に研究費からお金を払って雇用をするという形で研究を進めているわけです。日本のドクターの学生でもお金をサポートされて研究するという環境には必ずしもないわけですけれども、このARAプログラムはそういう学生の研究をサポートするお金も使えるようにしようということも一つの特徴になっています。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます どういうことをやっているかというと、幾つかサービスというか、活動の内容があるわけですけれども、1つは今日のシンポジウムの主体の一つになっているわけですけれども、こういう公開のシンポジウムとともに毎月1回フォーラムという形で、第2水曜日の夕刻に教官が1時間くらい話して、その後、少し飲み物を飲みながらインフォーマルな形で情報交換をするという情報理工のフォーラムという形をやっています。
 あとは、メールマガジンというのも日経ビジネスに外注して、中でどういうことが行われているかとか、関係の活動はどういうことが行われているか、成果が出ているかということを会員の企業、会員の企業と言っても数万人いる会社などですとかなり何万人の社員の方に流れると思うのですけれども、メールマガジンを月に2回発行しております。
 それとともに、従来と同じような共同研究とか委託研究とかももちろんやっているのですけれども、大きな1つの違いは、従来の委託研究とか共同研究というのは1企業と1人の先生とか1つの研究室というのが単位だったのですが、そうではなくて1企業と複数の研究室とか、更には複数の研究室と複数の企業というような形の研究のプログラムのアレンジをやっています。
 それとともに、コンサルティングみたいな形で新しい技術を企業がやろうとしているときに、必ずしも社内にわかる人がいなくて大学の方でそういうことを知っている方がいる場合、個別の研究会合というものをアレンジできるようにしています。それで、最初はそういうアレンジをしながら新しい芽を育てていこうということをやっているのですけれども、企業と教官も親密になってきて自発的にグループが出てきて、だんだんそういう自発的なグループが育っていくということを期待してやっているところです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます あとは、産学連携で大学ではTLO、東大で言うとキャスティというのがありますけれども、それとの違いというのは、キャスティとかTLOというのはできた技術を特許化して、それでビジネスにしようとか、産業に役立てようということをやっているわけですけれども、これは知財と人材の交流のところから、要するに成果の芽を生み出すところから、更にはまだそこまで十分にいっていないのですけれども、ベンチャーをサポートして企業を起こしていくというところまで広くサポートしていくということをやっています。それで、時間がないので人材の交流とか、お金の流れとか、そういうものは繁雑なので余り大学の事務を通さずに外の会社の東大総研というところが担ってくれていますけれども、運営の会社で柔軟にやろうということです。ですから、外の会社に運営をお願いするのでお金もかかるということで、企業の方から会員企業という形で会費をいただいているわけです。お金はここには抜けているのですけれども、正会員というのが今300万円ちょっとです。Sの会員というのは個別の研究費というか、個別の研究にも使える部分を含んでいただいているというところです。あとは、タイプYとか非常に下の方というか、安い方はベンチャー企業でフォーラムとか、そういうものに出ていただくのは結構なのですが、そういう情報提供が主なところです。Mというのは大きい企業なのだけれども、必ずしも情報が専業の企業ではないところです。例えば今、入っているところですと、鹿島建設などは情報ではないけれども、情報技術に興味があって新しい技術をフォローしていく必要があるという企業に入っていただいています。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます これは平成14年度、初年度に行ったフォーラムのテーマです。それで、これが今年度というか、2年目の平成15年度に行った、先ほど言ったように毎月1回夕刻に行っているんですけれども、それのテーマです。今年度は大学の方からお話をするだけではなくて、もう少し踏み込んだテーマをやって複数の企業と一緒のプロジェクトを立ち上げようとしています。その1つは、ヒューマノイドロボットによるソフトウェアのプラットホームをつくろう。ヒューマノイドロボットはホンダとかソニーとか出てきていまして、ソニーはエンターテイメントという形を施行していますけれども、そのほかのところは必ずしもビジネスの展開というものがはっきりしていないわけですが、だんだんいろいろな機能が出てくるとコンピュータのOSみたいな基盤がちゃんとしていないと新しい機能を付け加えていくことがなかなか難しくなってくるわけです。そういうまだビジネスがはっきりしていない段階で、特に日本は強いですから、ヒューマノイドのプラットホームのソフトウェアを一緒につくろうというプロジェクトを今、複数の企業と情報理工の複数の先生とで始めています。
 あとは今、始めようとしているのはユビキタスネットワークとかセンサーネットワークですね。センサーネットワークは先ほどもお話がありましたように、今後のネットワークとか情報基盤で大事になってくるだろうというので、会員の企業に日立が入っていただいていて、ミューチップとか、そういうハードウェアもありますので、そういうものを中心にしてやっていこうとしています。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます あとは、もう少し広いというか、抽象的な段階では、情報技術というのはエネルギーなどで社会に貢献しているわけですけれども、必ずしも社会的な認知というのは十分されていないということで、そういう情報技術が環境問題にどれだけ貢献しているかということを定量的とか、幾分クリアにしていこうというような部分の研究を文系の先生などとも一緒になって始めようとしております。
 こういう形で今、必ずしも十分多くないんですけれども、タイプSという企業と、タイプAという正会員の企業と、あとは小さいベンチャー企業とか、先ほど言った情報が専業ではない大きなメーカーなどが入って活動しております。
 そういうことで、情報理工学研究科の情報は基礎研究とともに社会に役立っていこうというので、産学連携を通じてもり立てていこうと思っていますので、企業の方がおられましたらより詳しいことは私なり、あとは受付のところにこのARAプログラムを担当している東大総研の方などがおられますので、相談していただければいろいろお話できるかと思います。どうもありがとうございました。

司会  せっかくですので、何か御質問などあればよろしくお願いします。よろしいですか。
 それでは、これにてプロジェクト報告のセッションを終わらせていただきます。

← BACK
(戦略ソフトウェア創造人材養成プログラム)
NEXT →
(ソフトウェアセキュリティ -特定領域研究を省みて)

ページ

TOPへ