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- プロジェクト報告 -
戦略ソフトウェア創造人材養成プログラム
人材養成プログラム運営委員長 平木 敬
講演資料
(この文章は当日行われた講演内容を録音したテープからおこしたものです)
司会  それでは、時間も押していますので、次の報告に移らせていただきたいと思います。次は、科学技術振興調整費戦略ソフトウェア創造人材養成プログラムのリーダーであります平木先生の方から御報告していただきます。
平木

クリックすると別Windowに大きな画像が見られます 戦略ソフトウェア創造人材養成プログラムというものを平成13年からやっておりまして、このシンポジウムは共催ですし、人材養成の内容というのはCOEの内容とも深く関連していますので、その内容の概要と、今までどういうことがやられたかということについてお話をしたいと思います。
 戦略ソフトウェア創造をどうして始めたかということからまずお話ししますと、数年前、日本では基盤的なソフトウェアの発信が遅れているということが科学技術会議で問題になりまして、それを取り返すべく人材養成の重点項目の1つとしてバイオインフォマティックスと並んで基盤的なソフトウェアというものが選ばれたわけです。その中で、今まで我々のやっていた教育は研究者を育てる教育であった。それから、別のところでやっている教育は非常にたくさんの、例えばシステムエンジニアというような人を育てる教育が中心であり、ソフトウェアの創造ということには余り焦点がなかった。ちょうど今の日本の教育システムで透き間が空いている点であります戦略ソフトウェアのごく少数の優れた人材を育てるということをターゲットにしまして、教育カリキュラムを組んでやってきたわけです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます そこで、その戦略ソフトウェアというのはどういうものかといいますと、次のページにもっとたくさん例がありますけれども、実はここに書いてありますように、例えばウィンドウを使ってマウスを使うという概念をソフトウェアでやったとか、初めてベーシックやDOSやワープロということをやった。または仮名漢字変換ということをやった。もっと近いものでは、例えばJAVAの言語というもの、ブラウザーというもの、こういうものというのは今日、我々が使っているコンピュータシステムまたは情報システムの根幹を成すもので、こういうものがあって初めて我々の使う世界ができてきたものであるわけです。 ところが、こういうものというのは実は大きな会社がつくったり、または製品にしたりする前に、必ず非常に少数の優れた個人、ここにたくさん名前が出ていますけれども、そういう人がそういうものを提案し、ソフトウェアをつくり、それが認められて初めて世の中に出てくるという歴史を繰り返したわけで、我々の目標はこういうものを東京大学から発信するような教育をしたいということになるわけです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます ですから、教育すべき内容というのは非常に難しいテーマですけれども、ソフトウェアを創造するためのどういうものをつくるかという企画力、またはつくりたいものを実際にプログラムという形にできる文筆力、更にそれを人にわかってもらって理解してもらうための表現力というものを特別なカリキュラムで鍛えることができたら、日本のソフトウェアの振興に役に立つのではないかと考えたわけです。そして、そのバックグラウンドはこういうものであり、我々は今ある研究者中心の大学院教育とは別の目的を持っているので、とりあえずは別の教育コースとして同時に開設するという形をとったわけです。
 ですから、その目的はここにありますようにキラーアプリケーション、次の世代のキラーアプリケーションをやる。また、基盤ソフトウェア、OSとか言語、またはUIという次の世代のものをつくる。そして、これを出た人はできたらソフトウェアをつくるような起業をしてほしいというようなことを考えたわけです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます こういうことというのは、今まで日本では研究者教育の副業としてやってきたわけですけれども、研究者というのは結局論文を書いてそれを発表するということが仕事であるわけですので、最後のひと押しの完成度、または企画というところで今まで欠ける点があったわけです。それを少数の人数を手間をかけて育てることによって、例えば芸術の分野に見られるような教育を行うことを目的としているというので、今までのほかの教育と異なっているという考えであるわけです。
 現在3年目に入っているわけですけれども、実際にやっているものは博士後期課程の学生または博士の研究員、博士号を取った後の研究員を2年間教育することによって今まで得られなかった創造という面の教育をしたい。
 では、なぜ割と年齢が上の人を対象にするかといいますと、やはりソフトウェアを書くということをする場合にはどうしても情報理工学の専門教育というものがなければ、幾らアイデアがあっても手が動かないわけです。ですから、そういう手が動く基本教育が済んだ人に対してその教育を行うということを目的にしたわけです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます 養成コースは2年間で、1年目はまずその基礎力、基礎的なアイデア、または文筆力を養うとともに基礎的な実験を行い、2年目でその受講生の持っているアイデアを実際に世に問えるような形でのソフトウェアにつくり上げるというOJT的なものをやったわけです。先ほどから何度も強調していますように、非常に少数の人数の優れた人を養成するために、養成人数は実は非常に少なくて、毎年3つの分野がありまして、各2名で合計6名、5年間合わせて24名育て上げるというような目標を持っていたわけです。
 このコースの修了要件としましては、戦略ソフトウェアをつくって皆が見て、ほほぉと言ったところで修了とする。その代わり、そのほほぉと言ったソフトウェアができたものはそれを公開し、更にそれを世の中に広めるための努力は我々が担当しましょうというストーリーになっているわけです。
 これを実現するためにどういうカリキュラムでやっているかといいますと2つの柱がありまして、1つが講義です。これは毎年6名の人だけではなくて、研究科全体を対象にして広く戦略ソフトウェアというのはどういうものであるかということを理解していただくということを目的にしています。
 2番目の柱は実験で、少数精鋭で非常にインテンシブで、2週間に1回くらいの割合で大体14、15人の先生と学生が集まりまして、一人ひとりについて現状、または企画について深く討論をするということを行ってきたわけです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます 分野としましては、21世紀COEのプロジェクトの3つの分野に公募をしてディペンダブル情報環境、大域移動分散システム、認識行動システムという3本柱で行ったわけです。それで、実は歴史的には逆でこちらの方が先に走っていましたので、非常にここでうまくいっているものをCOEに入れていただいたというような経緯があるわけです。
 ディペンダブル情報環境は先ほど坂井先生から説明がありましたように、世の中で使っていくために信頼するに足る情報システムをどのように構築するか、またはネットワークシステムに関連したセキュアーのソフトウェアをどうつくるかというような話がターゲットになっているわけです。2番目の大域移動分散システムというのは超高速で、かつ移動分散できるようなネットワークというものが普及したので、そういうものをどう使い、どうデータを皆の中で共有するかということがターゲットになっているわけです。認識行動システムはいわゆるメカニズムと、実際に行動をするというものと、ソフトウェアというものの間を埋めるようなものをつくっていく。例えば、重点項目としましてはヒューマノイドをどう扱うかとか、自分で学習し、世の中を認識するにはどうすればいいかというようなことがターゲットで、この3つが近未来的、例えば将来10年間に重要になる分野と我々が判断して、これを柱に教育を行っているわけです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます 実際の体制図というのは、ここにありますように情報理工学研究科は5つの専攻があります。その5つの専攻とは独立して戦略ソフトウェア創造人材養成ユニットというもので、全体で11名の特任教官と5名の兼担教官の合計16名の教官で運営しているわけです。それに対して、後でまた話が出ますけれども、外国から戦略ソフトウェアを実際に創造している著名な方を招いて短期に集中講義をする。または、国内からそういう方を招いて集中講義をお願いするということをやってきたわけです。
 それで、ここに書いたのは具体的なカリキュラムですけれども、兼担の教官及び特任教官はここにありますように、非常に基本的なソフトウェアをどうつくり、どう企画し、どう考えていくかという講義を行っております。これが1番の基幹講義に当たるもので、5つ現在講義を行っております。
 2番目の戦略ソフトウェア創造特別講義というのは、現在著名であるソフトウェアを直接開発している人からその内容について話を聞くということを目的に、昨年度はマイクロソフト社からウィンドウズの話をサンマイクロシステムズーム社からJAVAの話を聞いたわけです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます 3番目の演習セミナーは、話を聞くだけではわかりませんので、実際に手を動かしてソフトウェアの開発を行うにはどういうようなことを考え、どういう技術を身に付けなければならないかということを、我々の養成プログラムの特任教官が中心となって行ったわけです。
 4番目は、フォーラムというのは更により多くの戦略ソフトウェアの内容に触れてもらうために、内外の研究者、開発者を短期的に呼んでフォーラムを行ってきたわけです。この4本のものを同時並行的にすることによって講義をつくり上げてきたわけです。例えば、ここにありますのは昨年行いました英語で行う講義で、実際にウィンドウズの場合には日本では全く知られていないウィンドウズの内部のアーキテクチャやメモリ管理機構、同期、デバイスドライバーというような詳細の内容にわたって直接英語で講義をし、直接それらを使いこなすための演習課題を出して単位を与えるということをやってきたわけです。クリックすると別Windowに大きな画像が見られますJAVAではJAVAの内部構造、特に最近問題になっていますリアルタイムをJAVAでどう解決するかとか、プログラミングをどうするかというようなことを行ってきたわけです。
 このような話を聞くことによって我々は刺激を受けるとともに、またこれらは商品ですから直接開発者から聞かない限りは聞けないような内部の細部の理解を得ることができたので、大変意義深いものであったというふうに考えているわけです。





クリックすると別Windowに大きな画像が見られます 2つ目はソフトウェア演習で、ここに写っています特任教官の方なんですけれども、実際にヒューマノイドをつくりながら、このヒューマノイドをどうやって動かすか、またどうやってそれを使うためにOSを使いこなしていくかということについて非常に実践的な教育を行ってきたわけです。
 実験は、まず最初の1年間は基本的なソフトウェアの開発というものをターゲットに、このように企画をし、仕様を決め、線表を引き、プログラムし、デバッグし、評価して公開するという流れを一回やってもらう。それが終わったところで、次の1年間で直接受講をしている人が考えたアイデアというものをもう一回やって、最終的な課題をやるということをしたわけです。
 これは一般的な研究者教育である大学院教育と比較しますと、自らの企画説明と戦略性について深く、しかも幅の広い分野の教官と話し合うということが大きなメリットかと思っているわけです。普通の研究室ですと、相談する相手というのは研究室の指導教官1人ですので分野は1つなわけですけれども、ここでは15人くらいの先生と話をするわけですので、非常に広い分野の人と話ができる。しかも担当でない、例えばヒューマンインターフェイスをどうするかとか、ネットワークにどうつなぐかというような問題は教官と、やり取りをすることによって早く実現をすることができる。更に、アウトプットとして起業に関するサポートを行うということを目的にしているわけです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます ですから、論文を書くのではなくて、実際にそういうものをつくるということを我々もやっていくとともに、研究プロジェクトとの違いは、研究プロジェクトはあくまで研究をするわけですけれども、それだけではなくて講義とこういう研究が組み合わさっているというところが一つのメリットであるというふうに我々は考えているわけです。
 その結果、1年目のまずワンラウンド終わったところでどういうようなことを皆やってきたかといいますと、これは外でポスターとデモが行われていますので後でごらんいただけるわけですけれども、1つは例えば720台のここにありますようなノートPCを用いて分散協調的に将棋という課題を行いまして、実際に動いて、少しというところがちょっと悲しかったんですけれども、少し早かったというような成果が出て、こういうことが実現をするわけです。
クリックすると別Windowに大きな画像が見られます 2つ目は、これもやはり後ろにありますけれども、新しいプレゼンテーション用のソフトウェアであります「ことだま」という音声と画像とプレゼンテーションというものを一体にしたようなシステムをつくりました。これは手書きの感覚から、今ここでは私はパワーポイントのできているものを使ってしゃべっているわけですけれども、そうではなくて直接しゃべり、ここで手で書きながらやるだけでどんどんプレゼンテーションのソフトウェアができていくというようなものをつくり上げ、それを実現し、実際にそれを動かしたところ、マイクロソフトのタブレットPCソフトウェアコンテストで入賞したというようなある程度の成果が得られたわけです。
 このような取り組みというのは、実は科学技術振興調整費というのは時限ですので5年で終わってしまうので、我々はそれを5年で終わらせることなく、更に持続的に新しい専攻としてやっていくということを現在企画しています。もちろんまだ企画の段階ですので実現性は不明なわけですけれども、こういうことを大学の教育の一環としても取り入れ、COEのプロジェクトを盛り上げる一つの要素としていきたいと考えているわけです。以上です。

司会  ありがとうございました。それでは、せっかくですから幾つか御質問のある方は是非お願いします。
平木  是非とも後でデモの方を見てください。

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