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戦略ソフトウェア創造教育コース報告

学際情報学府 星野 瑠美子

 今年度の活動

今年度は、概括すると、人間と応対するロボットの頭脳部分の戦略的ソフトウェアの作成を目指した。その中で具体的に提案したのは、AIBOの新たなプログラムの作成、インテリジェントカメラロボットのソフトウェア構成、新たな留守番ロボットのソフトウェア構成であった。

ソフトウェアを提案するにあたって考察したのは、何を作りたいか、それが実現可能か、どんな構成にするか、競合する既存製品はないかということだった。特に、それが戦略的なのかというのは、一番心を砕いた課題であり、そのためにまず既存のソフトウェアの調査と何を目指すのかという討論を行った。

 ロボットシステムの調査とソフトウェアの領域の決定

 既存ロボットシステムの調査

まず、ロボットを対象としたソフトウェアを作る上での環境となる、既存ロボットシステムの調査と考察を行った。私が所属する井上稲葉研のシステム、商品として公開されているSony、Activmediaのシステムを調査対象とした。その結果を下にまとめる。

  井上稲葉研 SonyOpen-R Acivmedia
アプリケーションAPI StateNet/ContexNet Middle ware/Appication layer Saphira
制御API nervous System layer Aria
イメージ


井上稲葉研: Nervousというロボットのマイクロプロセッサ(h8)をシリアル通信で制御するシステムがあり、プラグイン形式で関節角を補間する。また、StateNet/ContextNetがEuslisp上の行動決定ネットワークとして存在し、センサ情報の解釈と行動選択、状態遷移を取り扱う。


SonyOpen-R開発環境: 公開されたSystem layer、各関節の動作やLEDの点灯、各種センサからのデータの取得、Wireless LAN(TCP/IP)を使ったデータの送受信(但しWireless LAN Cardが必要)が可能。また商用のAIBOWAREが使用し、一般には公開されていないmiddle ware layer・Application layerで、AIBOの歩行、音声認識、物体認識、MIDI音再生を制御できる。


Acivmedia知能ロボット: SRI人工知能センターが開発したもので、ARIAが速度や進行方向、入出力パスの制御を行っている。SaphiraはARIAの上に構成されるライブラリで、行動決定、障害物回避、経路プランニング、センサ情報の統合、マッピングを取り扱っている。

 

 既存ロボットシステムの考察

以上のような既存のロボットシステムは、ハードに近い制御部分のAPIと、アプリケーションレベルのAPIに分かれて構成されている。しかしその切り分け方は各システムによって異なってる。制御部分のAPIは機械制御(machine control)を司り、与えられたコマンドを機械のトルク/圧力等に変換し、フィードバックを受け取り、与えられたコマンド通りにロボットを動かしている。またセンサ情報を受け取るのもこのAPIである。

一方アプリケーションレベルのAPIは、制御部分のAPIを基礎として作られ、規則による行動決定、タスク記述、パスプランニング、センサ情報の解釈、判断、物体認識、画像処理を行う。

私が作りたいソフトウェアは、この2つのAPIを繋ぐ部分であり、人からの入出力も扱う部分であると明らかになった。このイメージを上図に示す。

 具体的なソフトウェアの検討

作りたいソフト領域は決まったが、具体的にどのような場面で役立つものを作ったらようかという次の課題が生まれた。私は一歩先の留守番ロボットの制作を考えた。そのロボットは、自動、手動どちらでも、家の安全を確認し、宅配便、郵便、業者、来客といった外部者と応対もでき、時には侵入者を発見してしかるべく通報を行い、留守中の家族やペットへの対応もできるものとしたいと思った。

 必要機能の分析

その場合のソフト領域を分析すると、ユーザが使いやすいユーザインタフェースと人間やセンサ入力に対する反応の記述(○○だったら××する)が必要だとわかった。また命令の優先度の決定とタスクのなめらかな切り替えも必要だった。
ユーザが使いやすいユーザインタフェースには、ユーザがロボットにやらせたいことを伝えられ、ロボットが現在どういう状態で何をするのかがユーザにわかるということが必要で、さらに入出力画面の見易さと自然言語対応が要求された。
また、センサ入力に対する反応の記述では、行動・状態の記述、すなわちシナリオスクリプトが必要で、そこでは、シークエンス、並列動作、2つの要素が問題となった。そして、その記述をロボットAPIの変換するエンジンが必要だとわかった。

 既存の留守番システム・ロボットの比較検討

対象は、ホームセキュリティ、Webカメラ、ホームロボットである。ここでは監視の柔軟性と、人への対応において、欠点があると考えられた。

Webカメラは利用者側の要求で外出中でも子供やペットの様子がみられ、個人的にいつでも設定を変えて使えるものであった。ホームロボットとしての番竜は、リモート操作ができ、火事やガス漏れを検知して携帯電話に連絡する機能を持っている。価格は約200万円であった。

ホームセキュリティシステムはセコムやSOKが開発したシステムで、センサとカメラによる24時間の侵入者監視のシステムである。利用者側の要求によって、外出中、深夜の安全の確保が可能で、いざという場合は警備員が来てくれるというサービスがあった。

ホームロボットについては4月にRobodexが催され、新たなロボットが発表された。
富士通のMARON-1はロボットの視野内に入った侵入者を検知し、携帯電話に連絡したり、携帯電話で遠隔操作でき、時間指定動作機能も持っていた。ただ、家族認識機能はないが、内蔵電話を用いて会話をすることも可能だった。
また三菱重工のwakamaruは身長1m横幅45cm重量30kgで、2つの車輪で移動することができる。(段差対応は1cmまで)手に物を持つことは出来ない。バッテリー駆動時間は約2時間で、充電も2時間である。自分で充電器の場所を覚えて充電することも可能である。指向性マイクと無指向性マイクを持ち、前方カメラ、全方位カメラを持つ。センサは赤外線、超音波、傾斜、触覚、衝突の5種である。無線LANで常時インターネットに接続している。また価格は100万円台である。

 戦略性の考察

このように本年度は既存のシステムの調査・分析と戦略的なソフトウェアが何であるか検討してきた。その結果これらの新しくRobodexにおいて発表された製品は私の目指す方向とかなり競合しているとわかり、自分のつくるソフトウェアが戦略的というプロジェクトの条件を満たすことが難しくなった。


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