東京大学本郷キャンパスの工学部2号館を対象としたCO2削減プロジェクト「グリーン東大工学部プロジェクト」が9日発足、活動を開始した。34組織という産学官の大連携により、CO2を2012年までに15%、2030年までに50%の削減を目指す。7月上旬、地球温暖化防止を主要テーマに開催される北海道洞爺湖サミットでは、2050年までに主要国間で60%以上のCO2削減について話し合われる見通しにあるが、大学が数値目標を掲げて大規模なCO2削減に取り組むのは、同プロジェクトが初めて。この内容については、6月11日から13日まで千葉県幕張で開かれる「INTEROP東京」の展示会場で展示する。
工学部2号館は2005年10月に竣工した地上12階建ての総合研究教育棟。大都市・東京の中で東大本郷キャンパスのCO2排出量は最大という調査結果が出されており、その中心に位置する2号館をモデルに削減のケーススタディに乗り出す。活動期間は当面2年で、その結果をもとに次のステップへの展開を計画している。
小宮山宏総長は、「東大サスティナブルキャンパスプロジェクト」と位置づけたこのプロジェクトは、全学で取り組む戦略的事業。サスティナブルな生活空間の実現に向けた社会実験であり、課題先進国の日本が、課題“解決”先進国として世界に貢献するための、きわめて重要な活動の1つとし、削減アジェンダが産学官の連携によって達成されることを期待するとコメントしている。
本プロジェクトでは、2号館内の空調、照明、研究室の使用電力、サーバールーム、ビルマネジメントシステムの消費電力量のリアルタイムモニタリングから開始し、プランニング、オペレーティングといった各連携制御機能の実現により、従来のような業務効率化のためのIT ではなく、付加価値を生み出す「グリーンIT」を推進する。「グリーンIT」は、環境保護に配慮した情報通信技術を指す概念として米国を中心に台頭している。日本では経産省が積極的に推進し、今年2月には産学官連携でグリーンITを推進する「グリーンIT推進協議会」が設立された。
今回のプロジェクトも同協議会のプロジェクトとして位置づけられている。グリーンITには、データセンターなどIT 化による電力消費量の増大を抑える目的と、IT 活用によって地球環境問題を克服する目的がある。本プロジェクトは、後者の可能性を追求し、東京のような先進国の大都市自らが、世界最高のコストパフォーマンスと技術レベルを誇るブロードバンドとデジタルの基盤を最大限効果的に活用した最先端のシステムモデルを構築し、世界の大都市へ模範を示すべきとの考えで検討された。
同プロジェクト発起人代表の江崎浩教授(電子情報学専攻)は、9日、東大武田先端知ビルで行った発足会で「削減目標を具体的に掲げたことは、達成に向けて参加していただいた皆様の知恵を集結することに大きな貢献をするものだと思います」と語っている。具体的な成果として予定しているのは、IT活用による地球環境問題の克服、協調型都市経営・地域経営手法の実現、付加価値ビジネスの育成、キャンパス向け省エネ設備調達仕様書の作成、省エネ効果ベンチマーク仕様書の作成など。
実証モデル構築の絶好のケーススタディとなる本プロジェクトは、東大という研究機関の頂点を担う教授陣や学生が理論と洞察にもとづき実践することで、OB や協力企業の活動と相まって、大都市社会への活動の普及が加速され、経済界への強い影響力も期待される。特に、効率化のためのIT ではなく、付加価値を生み出すIT としてまったく新しいビジネス振興が図られることから、新たな民間投資を誘発する可能性も高いとみられる。それだけに、プロジェクトの動向が注目される。
プロジェクトメンバーは以下のとおり
IPv6普及高度化推進協議会 |
慶應義塾大学 |
(2008年6月9日現在、50音順)
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