21 世紀COE プログラム 情報科学技術戦略コア
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拠点リーダー
東京大学大学院情報理工学系研究科
研究科長
武市正人 |
インターネットとパーソナルコンピュータに代表される情報機器を中心とする20世紀の情報技術は、情報システムと人間が共棲する21世紀に至って大きな変貌を遂げようとしている。本COE
プログラムは、情報科学から機械工学まで含む幅広い分野の研究を融合して、実世界に密着した21世紀の情報科学技術を確立することを目的としている。この目的を達するために、幅広い分野における研究教育を新しい情報学体系に向かって戦略的に先導するための組織(情報科学技術戦略コア)を設置し、「実世界情報システムプロジェクト」、「大域ディペンダブル情報基盤プロジェクト」、「超ロバスト計算原理プロジェクト」と呼ぶ3つの分野融合的なプロジェクトを展開している。
実世界情報システムプロジェクトでは、日常動作を認識する情報エージェントが人を見守り自然な対話のできるバーチャルリアリティシステムが人に語りかけ、複雑な作業をこなせるヒューマノイドロボットが人に歩み寄り、将来の情報家電としてのユビキタスアプライアンスが手を差し伸べる人を知りその人に応じて支える統合的な環境の研究開発を進めている(図1)。
大域ディペンダブル情報基盤プロジェクトでは、社会が真に依存できる大域的かつ個別的な情報インフラを実現するための技術として、オープン性・透過性・自動適応性の3つを満足するディペンダビリティ技術、全体としての統合的なディペンダビリティをもつチップアーキテクチャから応用までの要素技術、ネットワーク情報の統合的な活用をめざした大域情報処理技術の開発、汎用的なディペンダビリティ利用技術の開発を進めている(図2)。
超ロバスト計算原理プロジェクトでは、ソフトウェアが使用中にフリーズして動かなったり、計算誤差・測定誤差・物理雑音・人的ミス・確率的不確定性などの外乱によって誤動作したりすることをなくすために、構成要素が不完全であっても、相互に補い合って全体として正常に動く非常に頑健な計算原理の体系化に取り組んでいる(図3)。
これらの3つの融合プロジェクトを統括し、さらにCOEとしての長中期の研究の企画立案、研究成果の社会への還元、教育への還流を推進するヘッドクォータを設置し、研究教育を戦略的に展開している。平成16年度には、プロジェクト事業の中間評価を受け、これまでの実施状況をもとに、「継続することによって目的達成が可能である」という評価を得た。今後、情報科学の基礎技術に関する研究を充実させるとともに、産業界との連携も強めて、プロジェクトと人材養成を一体的に取り進めてゆき、当初の目的を達成するように努めたい。
実世界情報システム環境 |
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図1:実世界情報システムプロジェクト:人間のまわりに遍在するヒューマノイド、エージェント、ユビキタス
デバイスが、人間とともに生き、人間を支える情報システムの研究開発を進めている。 |
図2:大域ディペンダブル情報基盤プロジェクト:実世界情報システムの構成要素であるネットワークエージェントやユビキタス情報処理環境を支える大域的に分散されつつもディペンダブルな情報基盤の研究開発を進めている。 |
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図3:超ロバスト計算原理プロジェクト:実世界が持つ本質的に不安定な構成要素からロバストなシステムを構成する計算原理や実世界の忠実なシミュレーションを可能とする計算原理の研究開発を進めている。 |
情報科学技術戦略コアの構造:21世紀COEプログラム「情報科学技術戦略コア」では、研究活動を戦略的にリードする「戦略コアヘッドクォータ」を設置し、その統括のもとで、実世界情報システム・実世界情報基盤・実世界計算原理の3つの融合プロジェクトを展開している。 |
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流動還流研究員による戦略還流:流動還流研究員(ポスドク/博士課程学生レベル)を任用し、各融合プロジェクトにおいて最先端研究の経験を積ませ、そこで得た知識と知恵を体系・システム化して、大学院低学年および学部教育に反映させる。 |
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