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 2008/11/21
神経筋疾患の診断を高精度・高速化、リハビリも支援
筋肉と神経の動きを詳細に表現する人体モデルを使い
知能機械の中村教授グループ、スポーツ科学にも応用

 知能機械情報学専攻の山根克 准教授、中村仁彦教授、東大医学部付属病院の山本知孝助教の研究グループは、神経筋疾患の診断とリハビリテーションを支援するシステムを開発した。モーションキャプチャで人体の運動を計測し、全身の筋肉と神経の情報を推定する世界で最も詳細な人体モデルを使って、これまで医師の経験に頼っていた神経筋疾患の診断を定量化でき、適切な治療をすばやく行える道を拓いた。治療効果が短時間で評価できるため、QOL(生活の質)の向上につながる。医療だけでなく、スポーツ分野でも、身体や筋の状態が上級者と初級者ではどう違うかなどに応用できることから、的確なトレーニングに生かすことも可能だ。

 この研究は、神経内科の医師、スポーツ科学、ロボティクス、モデル同定の専門家らが共同でNEDO技術開発機構の産業技術研究助成事業の一環として行った。山根准教授はまず、人体の運動を低侵襲で計測する小型光学式モーションキャプチャシステムを開発した。また、従来の球状の反射マーカーに代えて、反射素材を布地にメッシュ状に貼ることで、計測点のデータを10倍程度増やす技術を開発した。この計測結果は、155関節(骨格モデル)、筋997本、腱50本、靭帯117本の筋・腱のネットワークと、脊髄神経ネットワークで構成される、世界最高の解析精度を持つ神経筋骨格モデルに送られ、筋肉や運動系神経活動の推定に利用される。運動データのデータベースとロボティクスの力学計算を利用することで、筋電計や床反力計を用いない計測も可能になり、従来の技術に比べコストを約10分の1に低減することも可能だ。

日用品アクセス支援ロボットシステム
診断支援システムにおける「詳細筋骨格モデル」(左)と「立ち上がり動作の解析例」(右上)
右下の2枚は、リハビリテーション支援システムにおける「歩行運動の可視化例」
一番右下の図は、複雑な全身運動を健常者の歩行運動と比較しやすいように低次元空間で表現したもの

 この神経筋骨格モデルを高速に構築するのに、ロボティクスで山根准教授らが開発した動力学計算法を用いた。従来のモデルでは考慮されないことが多かった筋―骨の干渉(関節の運動に伴い、筋が骨に巻きついて経路が変化すること)にスポットを当て、筋・腱の分岐をモデル化するのに最適化手法を取り入れるなど、多角的に改良を加えることによって、詳細な人体モデル開発に結びつけた。

 患者個人の特性に合った神経筋疾患の治療に応用するには、モデルのパラメーターを患者に合わせて容易に調整できるようにする必要がある。それに対応するため、日本人の体格の詳細な計測結果のデータベース(産業技術総合研究所)に基づいて、身長・体重など数個の計測データから全身の体型や各部位の質量などの詳細なパラメーターを推定する方法を開発した。また、神経内科の臨床診断において、医師の目視に頼っている関節や筋の硬直度の検査を、関節粘弾性パラメーターの同定法を採用することで定量的に評価できる技術も開発した。

 こうした開発要素を盛り込んだ神経筋疾患診断支援システムは、運動全体と筋活動の可視化や、複数の被験者の動作を同時に表示したり、解析したい部位を必要な精度で筋骨格モデルを切り替えたりできるようにしている。リハビリ支援では、健常者の標準運動をデータベースとして神経疾患患者の運動をマッピングし、健常者の運動との違いを可視化できる。今後、同研究グループは、神経筋骨格モデルに触覚や視覚などの感覚を含め、高次の神経疾患に対応できるようなシステムに向けて研究開発を進める考え。また、2009年度中には、企業と連携して共同開発したバイオメカニクス用の動作解析ソフトウェアを販売する予定。山根准教授は、2008年10月より、ディズニーがカーネギーメロン大学に新設した研究所にシニアリサーチャーとして転出している。

神経および筋肉等の運動計測・解析技術に関する従来技術と本研究との比較
計測精度
(計測対象の種類、数)
筋電データ
(実データ)の考慮
モーションキャプチャによる計測点数コスト
(1)AnyBody(AnyBody Technology社)
従来技術

筋501本
×
不可

(計測装置は含まない)

床反力計が必須であり高価
(2)ARMO(gsport社)
従来技術

下肢モデルで筋88本
×
不可

(計測装置は含まない)

床反力計が必須であり高価
(3)Motion Analysis(MotionAnalysis社)
従来技術

(運動計測のみ)

(運動計測のみ)

計測点数最大100点程度
×
きわめて高価
(4)本研究技術
155関節、筋997本(下肢のみで186本)、腱50本、靱帯117本

計測対象者の個々の筋電データを考慮したモデル最適化

計測点数500点

(1)、(2)のコストの 約1/10(床反力計不要,運動計測システムも安価)


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