21世紀COE「情報科学技術戦略コア」
融合プロジェクト合同ワークショップ
大域ディペンダブル情報基盤システムシンポジウム
松原 健二 ● 「これからのオンライン・ゲームサービス:ディペンダブルなサービスへ向けて」

(司会)

 ……いたしまして、株式会社コーエーより本日、松原健二先生を招待講演者としてお招きしております。僭越になりますが、私の方から招待講演者の松原先生のご紹介を簡単にさせていただきます。

 松原先生は本学の東京大学の電気工学科を1984年に卒業されました。その後、今はもうありませんけれども、本学の情報工学を専攻されまして、1986年に修士をお取りなりました。その後、日立へ入社されまして神奈川工場においてコンピューターアーキテクチャーの設計に従事されました。その後、MITに留学されまして、そこでMBAを取得されました。在は現在の職場でいらっしゃいます株式会社コーエーにおきまして、オンラインゲームの研究開発の統括を行っていらっしゃいます。オンラインゲームは我々も、非常に今はおなじみになっていまして、ビジネスとしても成立するということを我々も耳にしているところですので、本日はそのオンラインゲームの開発、研究あるいは中身のアーキテクチャーのお話について興味深いお話をしていただけるのではないかと、私も楽しみにしています。

 それでは松原先生、よろしくお願いいたします。

(松原)

 皆様、おはようございます。コーエーの松原でございます。ただいま田浦先生からご紹介いただきまして、私は電子工学時代は3号館にずっといて、あとは13号館にいましたが、こちらに来ることがなかなかなくて、ローソンがあったりだいぶ時代が変わったなと思いました。

 今日お話しさせていただくのは「これからのオンラインゲーム」、ディペンダブルということで、できるだけ皆様のご興味に沿うような形でお話をさせていただければと思いますが、正直申し上げてあまりテクニカルな、アカデミックな要素よりは、どんなビジネスをしているかといった話が中心ですので、ご覧いただければと思います。

 Agendaはこんな形で、皆様がオンラインゲームをどこまで詳しいのか分からないので、わりとオンラインゲームは初めてという方も含めまして、どんな種類や特徴があって、どんな市場であるかといったところからお話を進めさせていただきたいと思います。

 一言でオンラインゲームと言ってもいろいろな特徴がありますので、だいたいどんなところをオンラインゲームの定義として考えているかというところをお話しさせていただきます。

 インターネットを介して複数の人が参加してプレイするゲームというのをオンラインゲームと理解しております。この特徴としましては、1つはバーチャルに作られた社会の中で、実際のコミュニケーションとしてはリアル、バーチャルな社会を通して実際に人と人がコミュニケーションをするということが形成される、人と人の結び付くということが1つの特徴だと思います。もう1つはゲームシステムがインターネットの配信や、ダウンロードを通してゲームシステム自体が変化・成長を継続する。この2点が従来のパッケージゲームと大きく違う特徴であると考えております。

 ゲームのジャンルは皆様、だいたい1回はこれまでゲームをプレイした経験があると思いますが、オンラインゲームは今までパッケージゲームと違うようなジャンルで区別しています。MMOと呼ばれる数千人規模が同時に参加するゲームと、またMOと呼ばれる、せいぜい16人程度の人が参加する、この規模の違いによるMMO、MOというのがオンラインゲームのジャンルとして今、だいたい使われていると思います。それからカジュアルと呼ばれるのは言ってしまえばボードゲーム、マージャンゲームや将棋というものの場所を提供して、ポータルサイトなどが運営しているカジュアルゲームといったものと、だいたい大きく3つに分かれているところです。

 ビジネス的に成功しているという点であれば、この一番目のMMOが今日のお話に中心になりますけれども、ゲーム単体としてユーザーさんからお金をいただくというレベルになりますと、このMMOがだいたいそのビジネスの中心を占めている形になっています。

 どんな特徴があるのかを簡単な傾向で示してみますと、MMOが数千人という同時参加数も大きく、それに対応する反対のものがカジュアルという形で、右にいくに従って平凡なパラメーターでの比較をしています。プレイスタイルのヘビー・ライトというのと、ユーザー連帯、プレイ時間というのはだいたい重なっておりまして、後でもご紹介しますが、ピーク時間は真夜中です。だいたいプレイ時間はコアの人になると1日平均18時間以上プレイをしている人が、『信長の野望Online』という我々がやっているゲームで、今、6万人お金を払っている人がいますけど、この中でもう少しで1,000名ぐらいの、数百名を超えるぐらいの人が、1日に平均18時間プレイをしています。いったい何をやっているのでしょうかとは言ってはいけませんが、そういうお客様もいらっしゃいます。

 ゲームシステムは皆様には申し上げるまでもなく、インターネットを介してサーバーとクライアント、クライアントはオンラインゲームの主流はパソコンですけど、『信長の野望Online』ではPlayStation2のゲーム機でも提供しております。今後、皆様ご存じのように昨年、今年と新しいゲーム機が出てまいりますので、この家庭用ゲーム機でもどんどんオンラインゲームが普及していくと今は考えています。

 MMOの中でも日本、アジア中心にさらにもう少し細かいジャンルで見てみますと、RPGをMMOにも持ってきた、多人数参加型のRPGが一番はやっております。このゲーム性の特徴を見てみますと、当然ながらMMOの特徴である仲間と一緒にチームプレイをしたり、アイテムを交換したりと、本当にバーチャルな社会での生活が営まれています。RPGですので、これはロールプレイイングを行う一環としましてクエストをこなして、それによってレベルを上げ、そのレベルを上げることによってゲーム内の通貨、お金を得たり、またアイテムを得たりということをします。モンスターを倒したり、いろいろな探し物したりという形で、そういったレベルアップをしていきます。

 さらにゲーム内で獲得した通貨によって新しいアイテム、武器や服装や情報を購入したり、もしくはほかのプレイヤーと交易をして交換したりします。この繰り返し、成長して新たなクエストが出現する、それをクリアしてさらに上にいくと。RPGですので、どんどん上の成長を目指していきます。

 実際のパッケージゲームのRPGですと、最後にラスト・モンスター、最後だけではなくてステージごとにラスト・モンスターといわれるような強いモンスターが出てきて、最終的にこれを倒すとゲームが終わりとなりますが、MMORPGは終わりがありません。基本的には社会がずっと続くのと同じように、いろいろな楽しみ方を提供していますので、コミュニティーごとに、今日はあのモンスターをまた狩りにいこう、1回、2回ではなくて何回もモンスターを倒すということをします。また、このゲームシステムを提供するデベロッパー、パブリッシャーの方としても、飽きさせないように新しいモンスターだったり、新しいクエストだったり、そういったものを月に1回や3カ月に1回とか提供してまいりますので、終わりのないゲーム性になっています。

 プレイヤーの行動がゲームに影響するということも大きな特徴になっていると思います。だいたいゲーム内社会が変化する。例で申し上げますと『信長の野望Online』というのは、プレイヤーそれぞれが戦国時代の国々に所属して、そのプレイヤーの行動によって国の国力が高まります。国力が高まるとほかの国と合戦もできる。どの国と合戦をするかというのもプレイヤーが行動するようになっています。プレイヤーの行動が1人だけの行動だけではなくて大勢の行動でどんどんシステムが変化していきますので、こちら側、デベロッパー側、パブリッシャー側も予想しないような展開をしていきます。

 また、そういった中でプレイヤーはどんどんゲーム仕様に対する要望を開発者、パブリッシャーに投げてきますので、バージョンアップや追加開発でユーザーの声を積極的に取り入れます。今までパッケージゲームですとアンケートや、そういった形で直接というよりはある程度、時々ですが、パッケージを発売してその後のアンケート結果で次のシリーズへと反映していましたけれども、オンラインゲームはそういう点ではライブなシステムを常に提供していますので、そういった追加開発やバージョンアップへもライブに反応しています。

 システム特徴ですが、こちらはやはり7DAYS×24時間、ここまでいうと大げさですけど、『信長の野望Online』や『大航海時代Online』で2つのサービスを提供していますけれども、これは週に3時間のメンテナンスのみで、水曜日の1時半から4時半という形で、それ以外はフル稼働です。アクセスピークはだいたい11時半から12時半です。基本的にビジネスマンの方が帰ってきて寝るまでの間、ここにアクセスのピークがあります。『信長の野望Online』で見ますと、多いときで2万3,000名ぐらいが夜12時にサーバーにアクセスしています。だいたい東京ドームの半分ぐらいはアクセスしています。

 平日よりも休日、休暇にアクセスが増大します。ですから、例えばこういったクリティカルなほかの銀行のシステムですと、ゴールデンウイークに止めてバージョンアップをやると思いますが、お正月やゴールデンウイークには、いつもよりプレイする人が増えます。やはり休みのときにためてプレイしようというビジネスマンが結構いらっしゃいますので、そういった長い休みのときに、長く止めてバージョンアップやシステムの整備の行うことがなかなかできにくい、エンターテインメントならではですが、そういったことがあります。

 また数千名程度のスケーラビリティー、今のMMOはどこもデベロッパーの作るMMORPGでもワールド単位という形で提供しています。そのワールドをコピーする形でユーザーの人口を増やしますが、1ワールドがだいたい5,000人までという形での条件です。これは1つにはゲーム性の問題と、あとシステムの問題があります。将来を考えるとすると、このゲーム性とシステムをこの数千名というのを取り払って、できるだけスケーラブルに1ワールドでたくさんのプレイヤーができるようにすることが課題だと思います。

 あとはゾーン単位でのプレイヤーというのは、これはもう少し簡単に解決できると思っていますけれども、たいていのMMORPGはゾーンごとにアプリケーションが分かれていて、そのアプリケーションをサーバーにくくり付けているわけです。ゾーンというのは例えば甲斐の国から武蔵の国に移動する、甲斐のゾーン、武蔵のゾーンと分かれていますけれども、そのゾーンが分かれているときに、ゾーン単位でのプレイヤー数、そこで許容できるプレイヤーに上限がありますので、だいたいこれは数百名程度です。こういうゾーンに分けられているという作り方をするのが、今のどこの会社でもだいたい基本的なRPGになっています。

 それでは市場の方を見てみたいと思いますが、だいたいどんなものかというところで、これは日本を除いたオンラインゲームの市場です。だいたい2004年、もうおととしになってしまいますが、すでに1,000億円超と。皆様だいたいご存じだと思いますが、韓国でオンラインゲームが非常にはやっていて、その中でも半分は韓国です。だいたい30%ぐらいの成長を遂げて、2008年では倍近くになるだろうと。結構コンサバな予想かなと思っていて、もっと伸びる可能性もあると思います。やはり今、一番伸び率が高いのが中国になっていると思います。

 中国がどれぐらい伸びているかというと、こちらは2005年の市場ですが、ユーザー数が30%増えて2,600万人です。日本は後でもご紹介しますがだいたい300万人、400万人ぐらいだと思っていますので、それの7〜8倍です。そもそも人口で見ますと中国は10倍ぐらいですから、それに近いスケーラブルな人数がいると思います。売上もこれで見ますと565億円と50%増えています。特にこの中で注目したいのは、一番下の開発者数で1万2,600名、なかなか開発者数の合計は難しいと思いますけれども3倍です。それだけ中国のオンラインゲームの開発が盛んになっています。中国でオンラインゲームのベンチャーをつくるっているのは北京大学、清華大学を出たプログラマーの中でも、結構な数がそういう人が出てきて、上海でもそういう学生さんが増えているのが現実です。

 日本の市場ですが、これはかいろいろ統計があって幅が広いですけれども、経済産業省の関連団体の数字ですと、2004年度は580億円以上です。CASAというのはコンピューター・エンターテインメント・ソフトウエア協会ですが、こちらの統計では165億円です。パッケージあり・なしというのでだいぶ違いますが、これで3倍以上になっているわけです。

 あと『ファミ通』という有名ゲーム雑誌がありますけれども、こちらでやっているところで見ると昨年245億円です。だいたい私の一番感じで近いのはこの数字で、250億円から300億円ぐらいが去年の数字ではないかと思っています。パッケージソフトで見てみますと、やはり2005年はまだまだパッケージソフトは3,000億円ぐらいありますので、だいたい1割という感じです。非常に伸びてはいますけれども、日本全体で見るとまだまだ1割です。

 オンラインゲームのビジネスモデルです。その前にデモをお見せしたいと思います。『大航海時代Online』というものを、実際インターネットにつないでおりませんが、どんなものか見ていただきたいと思って用意しています。これはベンチマークで実際のグラフィックやデータを使って、あなたのPCはどれだけのスコアですか、このスコアだったらプレイできますという形でユーザーさんに情報提供するものを作っています。

 『大航海時代Online』というのは、弊社はもともと『大航海時代』という16世紀のヨーロッパを舞台にしたゲームを持っていますけれども、そちらを題材にしたオンラインゲームです。ご覧のようにフル3Dで、これはノートPCなので、動きますけど例えば走っているキャラクターが、ここでのベンチマークの主人公になっていますが、足元を見ていただいたら分かるように丸い影があります。設定を切り替えればこれもリアルな影の表現になりますが、それだけ丸い表現をノートPCだとちょっとかくかくしています。

 こういった街がだいたい大小の規模はありますが、大中小合わせて100ぐらいの街をつくって、その間、海で航海して冒険したり、海賊と戦ったり交易したりといった形で、冒険者の楽しみ、軍人としての楽しみ、交易者としての楽しみ、この3つの遊び方を提供していますが、基本となるのはやはり海での航海を通じて、あちこちの街に行くということがプレイヤーとなります。

 海に出ると今度キャラクターが完全に船になって、この辺の海の表現なんかをだいぶ凝って、このノートPCでも海がきれいに表現できるように頑張ったところを見ていただければと思います。海の上では時間の変化があって、今、太陽が沈んでいくところです。BGMはマイクをつないでいないのでお聞かせできないですけど、海と陸上でBGMが変えたり、その辺はゲーム性の中でいろいろなBGMを取り入れています。これは艦隊を組んでいますが、オンラインゲームならではです。

(ゲームデモ)

 海の中で嵐に出くわして、たまたまなんですけど荷物をナガされているところです。船員が流されたりして被害を受けているところです。今日の話は人間の話はあまりご説明しないですけれども、ゲームマスターというサポート組織がありまして、そちらでユーザーからのサポートの希望とか要望を受けておりますけれども、ゲームプレーヤーの中でも、普段はゲームを楽しんでいるんだけど嵐に出くわして大量の荷物を流してしまうと、ゲーム性などを◇強力な◇プレイしているユーザーさんをサポートするということです。

 今のは嵐のシーンですが、実は一番表現的には厳しくてノートPCの中でも、やはり嵐のシーンでうまく表現できるか、DirectXのドライバの問題で動かないとか、そういったことが一番多いシーンです。左の上にスコアが出ていますけど、こちらにLand、Sea、Characterと書いてありますが、今、海(Sea)のシーンにもスコアが出ますけど、陸上、海、それからこれから出る最後のところでキャラクターをたくさん表現しているので、そのモデルを表現する能力があるかどうかで、トータルで150あれば十分で、100あればプレイできることになっているので、このノートPCは十分に性能があって、本当はもっときれいに、影や海の反射の表現も高いレベルでできますが、今お任せの設定でやりましたので。

 すみません、中途半端ですけど戻ります。オンラインゲームはこのような形で提供していますけれども、いろいろな形のビジネスがあって、パッケージをただにするか、お金を取るかという話と、大きくは月額を定額で取るか従量制で取るかという、その2つのパラメーターとそれぞれの設定の方法があります。パッケージ料金が有料・無料というのは、正式なアカウント、体験版はだいたい無料のところが多いですけど、長くプレイを続けるためには最初のアカウント取得の費用でお金が掛かります。当然それぞれありますけど、韓国のゲームにおいては無料が多いです。日本発においては有料ゲームが多いという特徴があります。

 サービス料金も定額か従量かということがありますけど、これはプレイを続けるための費用ですが、定額の方がお互いに安心してというか、払う方もパブリッシャーとして運営する側も固定の収入になって安定するんですが、携帯ゲームやコンテンツもそうですけれども、決まった額を払うことに抵抗を示す方もいらっしゃるので、初心者に優しいのは最初のエントリー・バリアを低くして、使った分だけいただくという従量課金、だいたい最近はこちらが増えてきている感じです。初期のMMO、初期のオンラインゲームはやはりビジネスモデルといいますか、それ自体が不確定なので期間限定のは固定が多かったけれども今は従量制です。

 日本でどれぐらいのオンラインゲームがあるのだろうかということですが、これはだいたい1年半の間に3倍近く、2004年9月の日本でのMMOを中心としたタイトルは50タイトルでしたが、先月調べたところですと、開発中を含んでいますけれども137タイトルになっています。ビジネスモデルは今、申し上げたように従量制が結構多くなっています。

 コーエーのオンラインゲームを簡単にご紹介させていただきたいと思いますが、サービスを運営しているのが2タイトル、それから2タイトルを開発しています。私はオンラインゲーム全体を見ているというご紹介をいただきましたけれども、上の3タイトルについてはプロデューサーという形での仕事をしています。オンラインゲーム全体を見ているという立場と、それぞれのタイトルのプロデューサーをしています。一番下はプロデューサーが私の下にいまして、それを統括する形です。

 『信長の野望Online』も、3年ぐらい前に日本のMMOとしては、本当に初めてと言っていいと思いますが、スクウェア・エニックスさんという会社がありますけれども、そちらで『ファイナルファンタジーXI』という、やはりMMOがあります。それが2002年5月にサービスを開始されて、そのほぼ1年後の2003年6月に我々が開始しましたが、PlayStation2でのMMOというこの2つだけと言っていいと思います。日本初の日本で開発されたMMOとしては、スクウェア・エニックスさんとコーエーが非常にそれに注力していて、今ほかの大手と呼ばれているゲーム会社さんは、なかなかMMOを自社で開発するという形になっていない状況です。

 『大航海時代Online』は弊社の第2弾MMOとしまして、昨年3月からサービスを開始しまして、韓国、台湾でサービスを開始しました。中国でも今年中には何とかサービスしたいと思います。『大航海時代』『信長の野望Online』はこちらであるように海外展開をどんどん進めていますが、なぜこんなに海外展開をしなければいけないかというと、もちろんビジネスになるからですけれども、MMOは先ほど見ていただいたように3Dの大規模な開発なので、従来のパッケージゲームに比べてコストが掛かります。PlayStation2のゲームでいいますと、開発コストに5億円掛かるタイトルというのはあまり多くないと思います。一方、このオンラインゲームは『信長の野望Online』『大航海時代Online』にしても、最初のサービスインをするまでに10億円の開発コストが掛かっているので、それをさっさと回収するために、できるだけ海外にもビジネスを広げなければいけないことがあります。そういう点でオンラインゲームがはやっているアジアに、できるだけ積極的に進出しているところです。

 3つ目の『真・三國無双BB』というゲームですが、世界初と出ていて、これは先週の木曜日に発表会をやりましたが、このゲームの特徴はアクションゲームをオンラインにと。高スループット、高レーテンシーを必要としています。皆さんはアクションゲームを、格闘とかスポーツやシューティングも含めたアクションととらえていいと思いますが、アクションをやるときに、ボタンを押してからすぐ反応するという、この感覚がないと全然面白くないですけれども、普通の家庭用ゲーム機は60フレームで行います。このゲームはそのアクション性をやるために、クライアントからサーバーまで60フレームに相当する16.72セカンドで取ろうというのを求めていて、それだけのレーテンシーを必要としています。

 スループットはだいたい60分1秒に、できるだけ抑えたいのですけれども、やはり数百バイトをサーバーからクライアントに送る必要があります。クライアントがサーバーに関しては100バイトで済みますけれども、60分の1秒ごとにそれを転送するスループット、それを数千人、もしくはそれ以上といった形での全体でのクライアントサーバーシステムを構築するというところで、スループットとレーテンシーを、これまでのオンラインゲームではかなり違うレベルで必要としています。

 そういった点でソフトバンクさんと組ませていただいて、ソフトバンクのバックボーンの中で閉じる世界、IXの中から外に出ていくと、とてもレーテンシーなんてそこまで保証できませんので、ソフトバンクのインフラのチームと一緒に開発を進めさせていただいて、60フレームが実現できるようなシステムを今、開発しています。

 4つ目の『三國志Online』、これは従来の『三國志』というゲームをこれまで出してきて、大変好評を得ていますけれども、これのオンライン版です。『信長の野望』のオンライン版があるので『三國志』のオンライン版も作ろうということで、こちらの特徴はシンガポールで作っていることです。なぜシンガポールなのかというと、非常に東西文化が融合して、特に中国語と英語を皆さんが話せるといったところです。そういう点でアジアと欧米展開を目指すには、非常にいいところだと思って開発する拠点を昨年、1年半になりますが移して進めています。政府の援助が非常に積極的で、いろいろと最初の採用や研修生としての支援、そういったものも政府の援助が非常に強力だということもシンガポールに決めた理由です。こちらのゲームは来年開始する予定です。

 日本のオンラインゲームはこれからどうやって成長していくのかという話と産学連携の話をして、私の発表にしたいんですけれども、日本のオンラインゲームは、アジア、ほかの地域に比べるとまだまだ普及が足りていると言えない状況です。ただブロードバンドの普及が皆さんご存じのように、ここ5年ぐらいで非常に浸透してきまして、特にインターネット契約数に占めるブロードバンドの契約は非常に高いです。全世帯数のおよそ3割以上がブロードバンド世帯です。そうすると我々から見ると、オンラインゲームのターゲットは、やはり若い人から30代クラス、30代前半ぐらいまでがターゲットの中心になります。いわゆるほとんど世代をカバーしているのではないかといった見方です。あとブロードバンドのコストパフォーマンスは、日本は世界一で、やはりこの利点を使ってオンラインゲームはもっともっと普及する余地があるだろうと、伸びるチャンスがあるだろうと思っています。

 ブロードバンドの価格で見てみますと、これは2003年のデータですが、オンラインゲームが進んでいる、もしくはインターネット先進国といわれている韓国と比べても4分の1、アメリカと比べても30分の1くらいです。英国なんかで見ますと100倍の形で、非常に先進国の中で格差があります。スウェーデンなんかは韓国を肩を並べるほど安いですので、ヨーロッパの中でも地域によって、非常にばらつきがあるというのがこれを見ても分かると思います。こういった中でアジアが比較的ローコストでインターネットを提供している、ブロードバンドを提供しているところが多いですので、やはりオンラインゲームはアジアを中心に伸びていくだろうと思います。

 韓国でオンラインゲームが普及した要素の1つにインターネットカフェがあります。写真を資料であるかと思って探しましたがなかったので申し上げますけれども、皆さんほとんどインターネットカフェに日本では行ったことがないと思います。私も仕事で行った程度で、インターネットカフェに通常行くということはお聞きになっている皆さんも、あまりないと思います。

 韓国では非常にインターネットカフェがポピュラーで、だいたい学生さんが遊びに行く最もポピュラーな場所はインターネットカフェです。韓国は総人口4,700万人程度に対して約2.5万店舗、高校や大学で帰るときに4人ぐらいで、今日はオンラインゲームで遊んでいこうと1時間、2時間遊んで、それから家に帰るという非常にポピュラーなものです。一昔前のジャン荘といったイメージでもいいですけれども、韓国に行くと駅前の一番いい場所に、日本でいうとパチンコ屋さんがあるようなところにインターネットカフェがあって、そこが夕方、学生で非常ににぎわっているというところは全然、日本と違います。

 日本のインターネットカフェ事業はどうかというと、韓国に比べると人口が3倍までいかないですけれど、それに対して約2,000店舗しかありません。人口当たりの密度でいうと33分の1です。ですから、韓国で発展した同じような形ではオンラインゲームが発展するとは考えにくいと思っています。

 ではというところで、やはり日本でどういうふうにオンラインゲームを伸ばせばいいかというと、やはり家庭用ゲーム機が中心になってくると考えております。家庭用ゲーム機は今、生き残っていると言うと大変ハード屋さんには申し訳ないですが、PlayStation以降、GBA以降、図で見ると、だいたい日本では7,700万台のゲーム機がまだまだ残っています。昨年末から次世代ゲーム機が登場していますので、こちらのゲーム機は初めからオンライン機能が非常に初めから充実しております。ですから、これを生かした形のオンラインゲームは伸びていくだろうと思います。

 次世代オンラインゲーム機に求められる機能、要素といいますのは、上の2つはそもそもオンラインゲームを開発するサイドからゲーム機に求めるもの、一番下がオンラインゲームを開発する側での要素となっています。オンラインゲームを支援する機能として必要な課金や、ユーザー同士が対戦するマッチング、あとはユーザー同士が情報交換するコミュニティー支援、こういったものはオンラインゲーム一つ一つが持っていてもいいのですが、基本的に共通サービスとして提供される方がより開発する側から見ると、オンラインゲームそもそもの楽しみに集中できるといった利点がありますので、課金、マッチング、コミュニティーというのはもうオンラインゲームの共通プラットフォームとして提供してくれる。これが1つ求められる要素だと思います。

 それから、やはりオンラインゲームの機能があるといっても、次世代ゲーム機の普及速度がどれぐらいか。ゲーム機というのは今まで経験から100万台の壁、300万台の壁があるといわれております。それを超えると次の目標、次の数字に向けてのステップができるといわれていて、任天堂のDSが非常にはやっていることを、皆さん新聞等でご存じかもしれませんが、1年間で600万台以上売れました。これも昨年の秋ぐらいから急速に伸びて、300万台を突破した後、あっという間に600万台にいって、年末からほとんどの店で任天堂DSは売り切れです。先週3月2日にDS-Liteを発売しましたが、こちらは生産が間に合わないことがあって、まったく今は買えない状況です。日本では買えないけど海外では買えるという面白い現象になっています。

 こういった普及速度があれば、ネットワーク・エクスターナリティという言葉がありますが、うわさがうわさを呼んでどんどん広がりますので、同じ家庭用ゲーム機を持っている人同士でオンラインゲームを楽しんでいただけるというような基盤が整っております。3つ目は対応コンテンツです。要は簡単にもっと楽しめるオンラインを、作り手としては作らなければいけないということです。

 オンラインゲームは未来、どんどん発達していくだろうと考えておりますが、問題は何かということもお話ししておかなければと思いますので、ご紹介します。オンラインゲームはインターネットの世界で、共通の不正行為にかなり見舞われています。その中でも特徴的な不正行為はチートとボットというのがあります。チートはシステムのバグを利用することで、そういった不正な操作によりキャラクターのレベルを上げたり、ゲーム内通貨を異常にたくさん得たりする行為です。これはシステムというよりはゲームの性格、ゲームの作りの上のバグと言ってもいいですが、たまたまある組み合わせでやると、単純な仕掛けでどんどんお金が入ってくるようなゲームの中でバグがあったりすると、だいたい規約ではそれに付け込んでお金をためてはいけませんというのがあるんですが、大規模になればなるほど、そういったポイントがやはり見逃されてしまって、今ですとそれが1つでもあると、あっという間に「2ちゃんねる」とかで皆さんに知れ渡って、みんながゲームの中で同じことをやって、あっという間にお金をためてしまいます。これは開発する側の方にバグとすると責任がありますけど、やはりそれに付け込まれて、どんどんみんなが同じことをやってしまうという不正行為と呼んでいます。

 もう1つはボットです。ボットはゲーム以外のツールを使って、最近マクロでいろいろプログラムができるようなものがありますので、そういったオペレーションを繰り返して、自分がいない間、会社や学校に行っている間に同じことをやって、生産したりレベルを上げるような、そういった形でまたゲーム内通貨を得る行為があります。こういった行為は、やはりインターネットならではといいますか、必ずバグを探したり、ボットも例えば『信長の野望Online』では繰り返しの行為をちゃんとウオッチしていて、繰り返しの行為があると自動的にログアウトさせる、もしくはゲームマスターにアラートを上げるというシステムを開発していますけど、完全にいたちごっこになっていて、やればやるほど巧妙なやり方でそれを抜ける人が出てくるというのが現状です。

 もう1つはRMT(Real Money Trading)です。これも聞いたことがある方とない方があると思いますけど、これは今、日本のオンラインゲームの中で、かなり問題になっている要素です。ゲーム内の交易システムを使って、アイテムやゲーム内の通貨を交換できると最初の方のスライドで申し上げましたが、それを我々からすると悪用して、ゲーム内で実マネーで販売をします。ゲーム内の通貨もしくはゲーム内のアイテムを、実際のゲーム外のお金でやりとりをすることをRMTと呼んでいます。

 これも言ってしまえばそういう仕掛けは最初からやっていたので、個人がお小遣い稼ぎ、個人で楽しんでいるプレイヤーが、たまたま友達に何かそういうものをあげる、その見返りにちょっとしたお小遣いをもらうという程度はある程度、認識していました。実際アメリカでも『ウルティマ・オンライン』という初期のオンラインゲームでも、そういった個人のプレイヤーというか、個人のRMTを実践する人は存在していましたが、今、問題はこれを非常に組織的にやっている。「海外」と書いてありますけど、中国でどういうふうになっているかというと、アルバイトみたいな形で中国で雇います。システムが24時間動いているので24時間稼働してRMTをやる業者があります。

 どんなふうにやるかというと、これは弊社の例ではないですが、例えばある貴重なアイテム、レア・アイテムと呼んでいますけど、それを落とすモンスターがいるとします。モンスターと戦ってモンスターに勝つと、そのアイテムが手に入るという仕掛けになっているとすると、そのモンスターがどこに出現するかは、時間が決まって、場所が決まってするわけではないので、そのモンスターがどこに出現するかを探すチームという組織Aチームです。モンスターを倒すチームがBチームです。モンスターは人気があるので、ほかのプレイヤーも倒そうとしますけれども、ほかのプレイヤーの邪魔をしてそこに行けないようにするCチームがあります。Aチーム、Bチーム、Cチームを組織的につくって24時間がんがん回します。

 そのアイテムをせしめてしまうと、そのアイテムをオークションに出すんですが、ほとんどアイテムの多くがその会社に完全に独占されているので値段がどんどんつり上がります。構わない範囲で言ってしまえば『ファイナルファンタジーXI』で、1つのアイテムが40万円で取引されています。毎日、毎日その40万円のアイテムが何個が売れるわけです。中国の人件費は皆さんご存じだと思いますけど、大学を出ても日本円からすると10万円いかないところで、しかも大学を出ていない人を雇ってもできるようなプレイですので、中国で組織的にそういった工場というものをつくって、何十人、100人という単位で雇って日本にインターネットですので問題なくアクセスして、そういったRMT行為を行っているわけです。

 これは何が問題かというと、ゲームの中の健全性が破壊されると考えています。先ほど申し上げたように、レア・アイテムが絶対なければいけないというものではないですけど、やはりプレイヤーが欲しい、あれば便利というものですが、それが40万円お金を払わなければできないとすると、40万円を払う人はなかなかいないので、じゃあ、やめようかということで、ゲーム内の経済的なバランスが非常に崩れてきます。

 あと先ほど申し上げたようなAチーム、Bチーム、Cチーム、このCチームの行為は、ほかの人に対するハラスメントです。どうやって妨害するかというと、たいてい非常に卑猥な言葉とか嫌な言葉をプレイヤーに、どんどん寄ってたかってゲーム内のチャットで声を掛けて、やっているのが嫌になるという気持ちを起こさせまる、そういった健全性の破壊をやるということが1つあります。このRMTというのは今、申し上げたように、経済バランスやそういったハラスメントの行為によって大きな問題になっています。この問題のためにすべてゲーム性が破壊されているとまでは言いませんが、我々を含め、MMOの開発、運営をやっている者にとって、このRMTは結構大きな問題です。

 システム的に何もやっていないのかというとやっているんですが、しょせんMMOというか、最初のシステムとして他人との交流ができるように入れていますので、本質的にRMTを絶対止めるというのは既存のゲームでは非常に難しい。それはゲームをゼロから作り替えることに近いので、現実的にはそこまでやれない。新しいゲームであればいろいろと、もっとシステム的に防ぐ要素はあると思いますが、なかなか現時点では対応できていません。ここまで組織的にやれると思わなかったということです。

 次の課題として考えていますのは、シームレスのスケーラビリティーを伸ばすという話です。これは先ほど申し上げたので繰り返しになりますけれども、ワールド単位でのプレイヤー数の上限をどんどん増やさないといけない。これをなぜ増やさなければいけないかというと、やはりゲームというのはどのゲームにも、廃りとはやりがあって、はやっている間はどんどんワールドは増やしますけど、ある程度サチってゲームの寿命がありますので、10万人というレベル、今度は20万人というレベルに増えていく。そこから安定期を迎え、そこから衰退期。この成長期、安定期、衰退期を繰り返すというのはサービス・ビジネスとして共通です。

 このサービス・ビジネスは衰退期に入ったときに、どんどん人が減るので、そのときにたくさんのワールド、たくさんのサーバーを保持するのは非常に大変です。ですから、これをもっと縮退したいのですが、ワールドという形で複数持っていると、そのワールドを統合することは非常にゲーム性の上でも面倒くさいし、ユーザーの反発を招いてしまうと、こういった需要の増減に対してスケーラビリティーをもっと伸ばせるような、これはシステムだけではなくてゲーム性と伴って作っていかなければいけないというところで重要な問題だと思います。

 つまり、システムを増やせば5,000人も1万人、2万人という形でもできますが、2万人が同じ国に所属して面白いプレイができるかということになると、これはゲーム性の方で工夫をしないといけない。それだけのリソースや、それだけのアイテムの交易の流通が十分回るかというところに関して、やはりその辺をうまく考えておかないと、もしくは何らかの形で、そういう人数の集中を防ぐようなゲーム性を取り入れておかないとうまくいかないと考えていますので、これはゲーム性とシステムを合わせて開発が必要になります。

 あとはインターネットのサービスレベルですが、先ほど『真・三國志無双BB』でそういったチャレンジをすると言いましたが、ソフトバンクと組んで非常に大変なことをやっていますけれども、やはり全国を共通でカバーすることができないと思っていて、東京サーバー、大阪サーバーという形で分けなければいけないと思っています。こういったリアルタイム性が、もしもっと制限なく実現できれば、MMORPGだけではなくてスポーツやアクションなどの、さまざまなゲームがどんどんオンライン化できると思っています。目標としては家庭用ゲーム機と同じような60フレームが目標です。

 あまり P2P(peer-to-peer)でのゲームシステムということに関しては申し上げなかったですが、ゲーム機を開発する、特にこのMMOという多人数参加型であれば、あまりP2Pは考えておりません。その理由の一番はチートをされてしまいます。P2Pでは簡単に、簡単ではなくてもチートツールを作ってしまって、どんどんデータを書き換えて、異様に強い世界、自分だけが強いというところを作ってしまう人ができて、そういったゲーム性は結局、皆さんから見捨てられてしまいます。今、皆さんにフェアな形でプレイをしていただくシステムとしては、P2Pでの実現は難しい、従ってクライアントサーバー、リアルタイム性でやろうとすると、こういった問題が出てくるということです。

 あとは産学連携の取り組みということをお話しさせていただきたいと思います。韓国のお話をあまり詳しくしませんでしたが、海外、韓国、中国といったところでは、国レベルでのゲーム系を含んだコンテンツ支援が非常に盛んです。日本でもこういったコンテンツ振興法とかできて、ビジネス振興戦略の1つにという流れが出てきました。

 例えば韓国の一番分かりやすい例をご紹介しますと、韓国は皆さんご存じように2年間の徴兵制があります。オンラインゲームの大手のエンジニア、R&Dをやっている部門ですとこれが免除されます。オンラインゲームだけではなくて、ITの研究に従事している、それなりの一流レベルの研究者、もしくは開発者であるということになると、2年間がたった2週間の研修で済みます。皆さん、Jリーグのアン・ジョンファンという、女優さんが奥さんの人を覚えているかもしれませんが、彼もワールドカップに行くようなサッカー選手だと、兵役免除で2週間ですが、要はオンラインゲームをやっていると、あれと同じ生活が手に入ります。

 もっと言うと、インターハイみたいなゲームの選手権があって、それで優勝すると奨学金と推薦入学がもらえたり、大学の中にゲーム学科を持っている大学が多くあるといった形で、非常にコンテンツに関して、工学分野でそういったコンテンツを作るところが韓国では非常にたくさんあります。私はシンガポールにしょっちゅう行きますけれども、シンガポールでもポリテック、それからシンガポールの大学でもやはりゲーム学科を設けています。

 そういった中では、ここ東大でも昨年度から情報学科という、こういったプログラムが始まって、私もこちらでプロデューサー論という講義を担当させていただいていますが、こちらは全体としてはコンテンツの産学連携、一番の目的は人材育成ですので、もちろん技術的な専攻をする人、それから実際にプロデューサーとしてのマネジメントをする人、いろいろな人が参加してこういったプログラムが始まりましたが、日本でもこれからこういったことが進んでくるといいかなと思います。研究助成のJSTも予算が付いて、この上のクラスはどちらも原島先生が統括されていて、私も原島先生のお声掛けで両方に参加させていただいております。

 一番下の研究会、国際ゲーム開発者協会という、これはどちらかというとボトムアップ的な開発者の集まりで、学会というよりはコミュニティーといった要素が強くて、来週アメリカのサンノゼでゲーム・デベロッパーズ・カンファレンスというIGBAが主催者の1人となってやる、世界で一番大きな開発者のカンファレンスがあります。日本でもセデック(CEDEC)というのが9月にありますけれども、ゲームの開発やゲーム性やアカデミックな方々も参加するような形では、まだまだ日本では少なくて、アメリカのGDCといったレベルには、まだ至ってないという感じがしております。

 今日、ご招待いただいてこういったお話をさせていただくのも1つのご縁だと思いますけれども、こういった産学連携が、日本のゲームはどちらかというとポップカルチャーとして今まで育ってきて、産業としては非常に大きい、それこそ衰退している産業に比べると、まだまだゲーム産業全体では伸びていますので、これからも産業としての注目度は高いと思っていますが、アカデミックとの結び付きという点では、まだまだこれからの段階です。こういったゲームだけではなくコンテンツを作っていくといったことが工学としても、もちろん文科的な文系の学問の対象としてもアカデミックの中でより進んで研究をやって成果が出ることを、私としても希望しておりますし、できるだけのご協力をさせていただければと思っています。

 以上で私のご説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

(司会)  どうもありがとうございました。それではせっかくですので、何か質問がありましたら。
(  )

 大変面白い話をありがとうございました。コーエーさんは昔から歴史ゲームを作ってらっしゃいますけど、世界に海外に事業展開するときに、ゲーム自体のテーマの選び方は戦略上重要な要素だと思いますが、『大航海時代』はヨーロッパ、海でいろいろな国を旅するゲームで、『信長の野望』とか『三國志』とか一定の国の文化に対応したような世界を展開していくかというビジョンと経験がおありならちょっと教えていただきたいなと。国を越えたMMOになっていくと、ユーザーたちがどうやってコミュニケーションをするのかというのをちょっとお聞きしたいなと思います。

(松原)

 1つ目のお話ですが、オンラインゲームに限らず、実はゲームというのは非常に地域性が高いと思っています。例を挙げますと昨年イギリスで一番売れたゲームはクリケットゲームです。日本ではたぶん1本は売れるかもしれませんが、皆さんはどうでしょう。当然イギリスはクリケットが盛んで、去年ナショナルチームが非常に強かったですが、そういったこともあって、歴史的なものを入れても、『大航海時代』や『信長』『三國志』はヨーロッパや欧米ではなかなか、自分たちの歴史として見てくれません。どちらかというと東洋ファンタジーという形の、歴史の史実に基づいたうんぬんではなくて、歴史ファンタジー的な要素で欧米からは受け入れられています。ですから日本に比べると人気度は低いですが、それでも『三國志』みたいなものは結構チャイナの人も世界中に展開しているので、それなりの本数は出ております。

 ですから、こういったことを理解した上で、やはりそれぞれの地域で求められる文化性に合わせたものを作っていかなければいけないのがオンラインゲームであり、パッケージゲームであるわけです。特に一番はやはりグラフィックです。日本人が好むグラフィックと韓国人、欧米人は全然違います。『World of Warcraft』で世界一番はやっている500万人以上の人が入っているオンラインゲームですが、まったく日本では受けません。これはやはりモンスターのテイストとか『ドラクエ』とか『ファイナルファンタジー』に慣れている日本人から見ると、あまりにもグロテクスで、韓国でもアメリカでもばか受けなのに日本では受けないと、そういった地域性が非常に高いです。これは完全に感性の世界になりますが、こういったものとゲーム性をシステムにうまく取り入れることがオンラインゲームの特徴になると思います。

 2つ目の他言語です。他地域の人が来たときに、コーエーの場合は実はパートナーを組んで、その地域はそのパートナーに任せるという形でやっていますので、中国、台湾、韓国、それぞれのサーバーがあり、それぞれにしています。一方『ファイナルファンタジー』のスクウェアさんなんかは、世界でたった一個のワールドですが、基本的には言語は英語になっているようです。一応、翻訳ツールというのをシステムサイドで提供して、MMOは3つに省略して使うことが多いですけれども、先ほどのボットなどもそうですが、そういった言葉を組み合わせれば、あまり言語のコミュニケーションができなくても、一緒に外国人とパーティーを組んだりできます。私も以前プレイしているときに、韓国から『信長の野望Online』にアクセスしている韓国の人がいたんですけれども、話していると何となく日本語がおかしいなというぐらいでやった経験がありますが、基本的には言語の壁を乗り越えてやろうという、その気さえあれば、別にオンラインゲームの中だろうとリアルのコミュニケーションだろうと問題ないということは変わらないと思います。

(  )

 オンラインゲームを、私はバックボーンという立場からですが、例えばバックボーンに対する影響というものがある意味で気になるところなので、世の中は今、バックボーンというのはBtoBの負荷があって高すぎるということで、日本でも今後オンラインゲームがもっともっと本格化すると、韓国と同じような環境になったときに、例えば何が違うかというとオンラインゲームの場合には、主催している企業が特定できたときに、その◇負担◇に対する費用負担みたいなことをどう考えるかということが、バックボーンの人たちには難しい問題になってくると、その辺をどう考えられているでしょうか。

(  )

 それはもちろんできるわけですけれど、パブリックにしたときには、やはりサービスの◇高低◇が必ず問題になってくるわけで、そうしますとどっちが妥協せざるを得ないかというと、一般的にですけれども、例えばあるゲームのトラフィックを検出すると、例えば最初のスループットは上げるけど◇……◇上げるというふうにせざるを得ないということがたぶん出てくると思うので、それは逆にゲームとしては非常に困る事態だと思うんですね。その辺でどうバランスを取るかというのはたぶん大きな問題になってくると、ネットワークから見ると感じるところなわけですが。

(松原)

 実際プレイするときに使うスループットであれば予測可能というんでしょうか、それであればそれに応じた負担をするというのは非常にいいですけれども、一番、今スループットをオンラインゲームで必要とするのは、パッチのダウンロードだったり、無料体験版のダウンロードです。これは先ほどの『大航海時代Online』であれば、クライアントが1.8ギガバイトとか、そういうものが1日に2万ダウンロード出てしまうんですね。そうすると、とてもじゃないですけれど弊社だけで行っても、やはりISPさんに文句を言われるというとあれですが問い合わせがあることがあります。

 そういったときにいろいろなシステム的な解決をしようかと思いましたけれども、負担をするということよりも、それが一般的にもう少し平準化されるような形で提供することが考えられるのかなと。アメリカの例であると、パッチのダウンロードがいったんダウンロードするとP2Pでも送れるようになるという、これは『World of Warcraft』の例ですが行われていて、弊社ではポリシーの問題でそれが今、採用できないですが、それが社会的にもそういったP2Pで、うちのサーバーから常に落とさなければいけないのではなくて、トータルのスループットとしてネットワークに求めるものは同じでも、局所的な非常な混雑を避けられるようなシステムが、もっと世の中に進まないかなということを期待しております。

(  ) ありがとうございました。
(  )

 本来、僕が紹介をしなければいけなかったんですけれども、松原さんはオラクルにおられたと思いますけれども、我々の業界で一番面白いのは、何か先進的なシステムを作ったときに、ほとんどデータベースを使わない。オラクルさんでもデータベースのベンダーさんが来られると、「このシステムを面白いと思うんですが、データベースを使っているんですか」という質問にいつも受けて、「いや、実は使っていません」というのが結構、自虐的な楽しみになっているんですが、最近、かなり速くなっているような印象を僕も受けまして、こういうオンラインゲームにDBMSが果たす役割があるのかどうかというのが1つです。

 もう1つは最初のご質問と結構近いんですが、インターナショナリゼーションのコンテンツに対してなされるときのコストはどれぐらいのパーセンテージを占めているのかということをお聞きしたい。

(松原)

 1番目の質問のデータベースですが、私は元オラクルにいましたけれども、コストの問題から今はMy SQLを使っています。ただオラクルの要素でいろいろ使いところはたくさんあります。1つは性能ですけれども、もう1つは分散です。オラクルで言えばRAC(Real Application Clusters)というような、そういったスケーラビリティーを伸ばすために使いたいかなと。今、一番負荷が多いのは、具体的な例で言うとオンラインゲームは。ユーザーが入ってきたときに友達が今どこにいるかを検索することを非常にやります。どこにいるかによって自分もどこで遊ぼうかと。それの負荷が当然、今の我々のデータベースの作りだと重くて、カレントなユーザーが今どのワールドで遊んでいるかを全ワールドを検索して、それを絞り込んで出すといったものに関して、これをリアルタイムでみんなにやられると非常に困ってしまう、そこのところが問題です。

 こういった負荷の問題が非常にあちこちであって、基本的にはそういった制限によって、まだまだサービスの提供を、もっとこんなサービスがあればいいというのに提供できてないところがありますので、データベースはスキーマーの作り方から実装の仕方、それから高速性のところを全部含めてデータベースの作り方、それからマネジメントシステムというところでもサービスの向上は大きいと思います。

 2つ目のインターナショナリゼーションのところですが、このコストは開発のコストで見てみればそんなに大きくありません。やはり我々の場合は今、日本語で作ってしまって、それを言語の翻訳をして載せるということであれば、全体のコストで見ると、先ほど申し上げたようにサービスシステムは、日本語の開発だけで10億円掛かりますけれども、翻訳をして組み込んで、多少ある程度のカルチャライゼーションを入れて、言ってしまえば1億円も掛からない、10%も掛からないです。5%は掛かりますけど、5%から10%とはないというような、5,000万円から1億円ぐらいの間でしょうか。

 ただし、その後の運営組織の維持は非常に大変で、我々はパートナーでやっていますが、先ほど申し上げたように地域性が全然違うので、『大航海時代Online』も、日本のユーザーが言ってくるのと、韓国のユーザーが言ってくること、台湾のユーザーが言ってくることは違うんですね。それにどう応えるか。やはりビジネスですので、ある程度ユーザーの要望を入れておかないと解決できないといいますか、ビジネスとして成長ができないので、これは本来オリジナル版に入れる開発しようかという判断と、これはオリジナルではなくて韓国版だけでアドオンで作ろうというような判断をして、それの調整をして開発するとなると、結構、月々の運営コストは日本も韓国も台湾も変わらないです。サーバー等を除いた部分の人件費になりますが、それは地域ごとに変わらないです。ですからランニングコスト自体が結構思いということです。

(  )  今日はお話をありがとうございました。レーテンシーのところのお話にちょっと興味があるんですけれども、ヤフーBBさんと一緒になって◇ライブ◇でされて、アクションゲームのような場合でも出演者を踏まない形でというお話だったんですが、ただし、やはりリアリティをどんどん上げていこうという方向に行くと思うんですね。そうすると、やはりいくらスピードが速くなって、スピードが上がったとしても、どこかでその限界が来るんじゃないかというような、避けられないレーテンシーが出てくるのではないかという気がするんですが、そういったときに別の何かアプローチで、それを超えるようなお考えがあるかということと、そのときに思ったのですが、例えば◇レンクアップ◇ロボットなんかのときに、どうしても通信に時間がかかるというのは、ある程度自立性を先に持たせておいて、レーテンシーの影響を軽減するということがあると思うんですが、そういったことはオンラインゲームで今後考えていかれるのかということを。
(松原)

 1点目ですけれども、一応オンラインゲームで今、目標としているレーテンシーはベンチマーク、家庭用ゲーム機です。ですから、60フレームが実現できるというところまで持っていけば、それ以上速くする必要は今のところ、家庭用ゲーム機に慣れている人たちを取り込みたいと、取りあえずの目標はそこにあります。それ以上速くなってというよりも、今度はそこになると人間のスピードは、アクションゲームで考えるとそれ以上速く反応できないので、レーテンシーというよりもスループットの世界のことになるわけです。

 そうすると、例えば今まで4:4になっているものが、スループットが増すことによって16:16、もしくは128:128の表示画面で見れば、そういった大勢の戦いできると思いますが、基本的にはそういったスループットの上昇によって、まだまだゲーム性は伸びるのかなと現在では考えているので、これがちょっと限界に来てどういう方向に行くかは、今のところはあまりアイデアがないですけれども、そこまでのところができてくると、それを使った新しいゲーム性を考えることもまた出てくると思うんですね。

 コーエーの例で見るとPlayStation2が出てきたときに、やはりこれはすごい描画性能があるなといったことで、今『真・三國無双』というコーエーの100万本売れたタイトルがありますが、30人、40人を一気になぎ倒すというシーンが初めてPlayStation2で実現できました。それまでなかったんですね。格闘ゲームというのは1対1だったんですが、大勢をなぎ倒すというシーンができてきたので、システムをある程度新しいゲーム性に与えて、それに関して我々作り手としては、こんなシステムができるのだったら、こういうゲーム性を持っていけると、そこのブレークスルーが生まれるとは思うんですけれども、頭の中にはいろいろあります。もう1点はどういうご質問でしたっけ。

(  )  そのときにゲームのキャラクターの方に自立性みたいなものを持たせて……
(松原)

 現在はレーテンシーが間に合わないときに、そんなに遅れるわけではないですけれども、人と人が戦っているときに、もし間に合わなかったらという形で、いきなり何もアクションしないとすぐ負けてしまうので、ある程度アルゴリズミックな予測をして、もしこれが来なかったときにはこういうプレイをするというのはすでに入れています。でないと人と人との戦いやはり落ちてしまうという、レーテンシーが間に合わない人がいたときに、もう無防備になってしまうとあまりにもゲーム性としてお粗末なので、それに関してはすでにクライアントに入れていますけれども、逆にそれを入れ過ぎるとまたチートの問題になっちゃうんですね。

 ともかくメモリーの上で動かすアルゴリズムというのを非常に気にしないと、必ずチートされてしまうと、我々は今までの経験を持っているので、ロボットの比較に関しては、そういうことが実際のシステムで今後も行われると思いますが、ゲーム性においてはこのチートという問題が解決されない限り、自立的なものをやってもそこを破られて、そこを狙って自分だけずるいことをしてうまくレベルを上げる人が必ず出てくると思いますので、持たせなければゲーム性としてあまり面白くない。やり過ぎるとチートの問題が出てくるということで、そこのバランスが正直言って合ってない部分があると思います。

(  )  RMTの話があったと思いますが、さまざまな認識、見方はあると思いますけど、1プレイヤーの視点からして、僕が今、思うことはゲーム内のアイテムというものに価値があるという認識は受け入れざるを得ない状況だと思うんですね。そういう金銭価値があるものに対して、非常に無防備な状態になっているのが、僕は一番問題であると思います。普通、株式で言えば証券取引法があって、法律で守られるべきことだと思うんですが、現在、会社内のルールで守られている、守られてないのか非常に危うい状況になっていると思いますが、それについて今後どういう形が求められるべきか、どういうふうにお考えなのか教えてください。
(松原)

 まずシステム的にできるものは、やらなければいけないと思っています。ただ先ほど申し上げたように今、走っているゲームはシステム的にすべて取り入れるのは非常に難しい。であれば、システム的にできることはやりますが、それ以外のところで今いろいろな形での、簡単に言えば法まではいかないかもしれませんけれども、RMTの我々にとての一番問題はゲームの健全性を損なうことです。アイテム自身が価値を持っているとか、そういうことを否定することではなくて、ゲームの健全性を損なう行為がRMTで伴って行われていることが一番問題だと思うので、そのRMTからゲームの健全性を損なうという、そこをカットするような法的な制度を含めて、これは我々だけではできないので行政、それからいろいろなISPさん、こういった業者さんの協力も得なければいけないので、今、進めているところです。

 具体的にはやはりゲーム・パブリッシャーやデベロッパーの中で片付かない問題なので簡単には進んでおりませんが、この1年をとっても、かなりの打ち合わせの時間に費やしています。RMTがゲームの健全性を損なわない形であればいいというのは、これは各パブリッシャーさんにとって全然、考えも違いますけど、健全性を損なうという点でこれを撲滅するというのは共通している認識だと思っていますので、今、具体的には申し上げる段階ではないですが、ユーザーに楽しんでプレイをしていただけるような形でRMTが、そういう発展性というか、解決できるようになればいいなと。ちょっと中途半端になりましたけど。

(  )  個人的な意見なんですが、やはりコーエーさんで持っておられるコンテンツが、RMTの業者によって傷つけられているのは権利侵害だと思うので、そういう立場から、それがひいてはコーエーさんの立場だけではなくて、ユーザーの立場も守らなければいけないと思うので、コンテンツという形なるのではないかなと。
(松原)

 今のところの最初の権利の侵害というのを、もう少し今までの検討結果で申し上げると、具体的な法律レベルで権利の侵害であると我々が判断できるものがないということです。著作権上でも著作権、人格権でもRMTというのは法律違反ではないという解釈、これは政府が言っていることなので、そういう事例が昨年発表されています。

 従って訴えることはもちろん可能ですけれども、そういうことをやるよりも実質的な回答を我々は求めているので、今までの中で、我々自身は我々のゲームの健全性が損なわれているという、我々のコンテンツを妨害するものという認識を持っていますけれども、RMTというのはしょせん数値、データを交換しているものであって、著作権法でいうところの著作権や人格権を損なうものではないというふうになっているんですね。

 なので、これ以上著作権法に頼る形ではなくて、法律であれば例えば不正競争防止法とか、ダフ屋行為ですね。そういった形の方に訴える方がより積極的に効果があるかなと。これも簡単にはないので今も話を続けているところですが、コーエーを含めて大手数社は、この問題に関してかなり裏で、ユーザーの皆さんに見えないとは思いますが、取り組んでいて、行政を含めてかなり打ち合わせをしています。ご意見ありがとうございます。今後の参考にさせていただきます。

(司会)  では、どうもありがとうございました。(拍手)。
(  )  非常に興味深い講演の上にタイムキーパーがなっていなくて時間が押してしまいました。それでは次の……

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