21世紀COE「情報科学技術戦略コア」
融合プロジェクト合同ワークショップ
大域ディペンダブル情報基盤システムシンポジウム
平木 敬 ● 「COE HQ報告」

(司会)

 引き続きまして、我々の拠点のヘッドクオーターという全体をステアリングする部門がありますが、そこの統括であります平木教授よりご挨拶をさせていただきます。

(平木)

 ご紹介いただきましたヘッドクオーターの平木です。私は実は坂井の下で大域ディペンダブルの事務としましても担当しているわけですけれど、今日は少し立場を変えましてプロジェクト全体の進行をまとめまして担当している立場からごあいさつをしたいと思います。

 これは何度も使っているものですけれど、もともと情報科学技術戦略コアというのは何をしているかという一番重要なコアになる部分です。情報科学技術戦略コアというのは皆さんご存じのように、情報理工学系研究科ができたその理念に、非常に密着に関連しているわけですが、今まで多くの研究プロジェクトはボトムアップ的に、これをやっている先生がいる、これをやっている先生がいると、ではまとめてこういうふうにしようということがあったわけですが、ここではコアまたはヘッドクオーターという名前に見られますように、トップダウンが拠点運営をやっていて、それによってより効果的な共同研究の戦略をやったり、先ほど武市先生から話があった融合サブプロジェクト、またはそのサブプロジェクト間の連携ということを、ボトムアップ的にやっていますとなかなか実現しないことを、トップダウン的に実現して確固たる拠点を築こうということが、1つの大きな目的でありました。

 融合の話というのは昨日からありましたけれども、今日、最後の方で私が見るところの融合とは何かという話をしたいと思います。次にもう1つ非常に大きいものは、教育を含めまして、研究と教育というものは、我々教員の立場からすると一体でやっているわけですけれど、若手研究員または教官はともすると研究にばかり目が行ってしまって、教育になかなか目が行かない。せっかく非常に優れた人材の方々がいるのに、それがなかなか次世代を育てるのに役立たないという問題点が指摘されたので、これもトップダウン的な融合によりまして、流動環流研究員によってそれを大学院教育に還元していこうと。具体的には、そういうことを実現するための組織である講義、または研究等をまたぐ活動としてこういうものを実現しようと。

 この2つのものを最終的には今年、第4年度が終わって、来年度が終わりますとCOEの拠点形成が終わるわけで、当然、文部科学省的の方からすると、拠点はできたのではないかと言われてしまうので、できた時点ですべてがなくなってしまってはだめなわけですので、それをどうやって永続させるかということを考えているわけです。

 これは昨年度使いましたので、実世界ソリューションセンターとか、国際的な研究が旺盛になり、そのほかさまざまな融合的分野における研究センターを研究科を中心として、研究科だけにではなくて、東京大学に開かれた形で実現したい。もちろんこのCOEの中にも工学系研究科のチームも入っていますが、情報工学系、工学系、可能であればもっと全学に輪を広げた情報科学技術の拠点を永続化していくことを、来年度の大きな事業として考えているわけです。

 拠点の構造は非常に簡単でして、真ん中に我々戦略コアのヘッドクオーターが約8名ぐらいるわけですが、それが常に状況を把握しながら次のプランニングを行って、実際は実世界情報システム、それから超ロバスト計算原理、それから大域ディペンダブルという、今日は大域ディペンダブルというものが話題ですけれども、そういうものがお互いに連携し、支え合いながら全体のフレームを作っていって、最終的にはその3つが別個の成果を挙げるとともに、1つにまとまって、これが融合した結果がこれであるという結果を挙げたいと考えているわけです。この矢印やこの辺の話は、後でもう一度出てきますので、よく見ておいていただきたいと思います。

 平成17年度はその4年目としまして、さまざまな活動を行いました。まず3個のサブプロジェクト、実世界というのはヒューマノイド、または実世界の認識というものを中心にしたプロジェクトで、予算的には一番大きい額を用いて研究を行ってきました。大域ディペンダブルはこのプロジェクトですが、大きく分けていわゆるシステムに関する研究と、そのシステムの上で何をするかという研究の、2つに分かれてさまざまなことをやってきました。

 超ロバスト計算原理プロジェクトは、もう少し理論的にそれらを支える理論的なフレームワークは何かということで、後でまた比較を用います。この3つはすべてあと1年しか完成までないので、その準備ということを今、ターゲットに一生懸命頑張って、最終的に何を残すかということが一番の目標になっていると考えています。ヘッドクオーター統括といたしましては、それがどういうものであるかということを、各プロジェクトにお願いしていきたいと考えています。

 しかもそれだけではなくて、2つ目の重点でありました研究教育体制の模索ということは、実は大変重要な意味を持っています。特に教育に対するアプローチをどう永続化させるかというのは、東京大学の中で我々は、今すごく複雑な制約を持っているわけです。例えば学部の定員は1名入ろうとすると、学部がひっくり返るような大騒ぎになるというような、非常に堅い制約条件で我々は規制化しているわけですが、その中でこれだけの成果をもとにどうやってアプローチするか、または情報科学技術に対する学部から大学院に至るような研究を確立するかは、来年1年、非常に大きい課題になっているので、私も頑張りますけれども、代表者であります武市先生は、たぶん非常に大変な1年間ではないかと考えています。

 さて、各プロジェクトの進行状況ですけれど、大域ディペンダブルにつきましては、今から詳しい説明がありますので、残りの2つについて言いたいわけです。実世界プロジェクトというのは非常にさまざまものに分かれてきたわけですが、最終年度に残るものとしましては工学部8号館に実世界プロジェクトショールームを造りまして、これは実際にはこうはならないですが、このイメージに近いような、実際に情報的な機械として支援するものと、人間が共存するという、実際にこんなに広くないですが、このぐらいの部屋を造りまして、その中で実世界情報システムというものが具現化したらどうなるかを、ショールーム的に紹介していくものを築いていくことになります。

 たぶん今年の秋から冬ぐらいにかけて完成すると思われます。もちろんその中には大域ディペンダブルの人たちの支援またはサポート、または融合というものが、たくさん含まれるとともに、そういうものイメージして、次に何をすべきかを考えていくことが大事だと見ていただきたいと考えているわけです。

 超ロバストプロジェクトは理論経路を絵にするのが目的なので、いただいたこんな絵になってしまったわけですが、今、言ったような実世界の問題に対応するためには、今までのような単純に理論のための理論ではだめで、現実に耐え得るような理論をつくらなければいけないということで、杉原先生を中心にさまざまな例えば誤差ですとか、発展性とか、故障またヒューマンファクターなど、そういうものを取り入れても実際の場面で使えるアルゴリズムをさまざま作ってきたわけです。

 その成果の紹介としましては、先ほどの実世界ではショールームを造りましたが、ここではミュージアムができておりまして、ちょうど向かいの化学の旧館の1階に、超ロバストミュージアムがすでにできていまして、そこに行きますと、さまざまな研究成果が見られるようになっていますので、もし一度も行かれたことがない方がいれば、今日の休み時間に、ここから歩いて3分で行けますので、ぜひ超ロバストがどういうものかを見ていただきたいと思います。

 大域ディペンダブルについては、今日いろいろな話がありますけれど、話をしないもの中としましては、自分の話を最初にして申し訳ないですけど、超高速のネットワーク技術をずっとやっていまして、ようやく10ギガbpsの情報ネットワークというものを完全に手にしたなという実感が得られるところまで来たわけです。それによって実際にプロジェクトの終わりまでに、大域の超高速のデータ共有システムを実際に運用できるような形にしたいと考えています。ちなみにTCPによる高効率利用ですが、現在我々が達成している効率は98%ですので、ほぼもうこの技術は満タンかなと思っています。

 それから田浦先生のところでは大域で大規模なクラスタシステムの実用化をやっていまして、非常に有用なツール、非常に目覚ましいものがたくさんできていますし、さらにその上で大域分散的なアルゴリズムで、有用な計算がどうやって実現をするかというので、実際に田浦先生のところの成果は、実世界のところでも例えば、計算的な基盤としてすでに広く使われ始めているという意味で、ある実質的な融合が進んでいるのではないかと考えています。

 それ以外に、今度はその上で何をするかという話では、例えばウイルスの防御網やユビキタス化ネットワーク、そういうものを含めて実世界ではどういうものを使っていくかということを大域ネットワーク環境の中で研究開発を進めているわけです。

 いよいよもう3月ですので、来月から第5年度でいよいよ最後に年度になったわけで、どうやって融合を実現するかということ、それからあと成果は何を得られるかということをいよいよかぎ取らなければいけなくなったので、大域ディペンダブル関係の皆さんにも、ぜひとも外から見えるような成果、または外から見えるような融合というものを、ぜひともかぎ取っていっていただきたいというふうに、もちろん自分の一員ですから自分もやらなければいけないですが、統括の立場としては考えております。

 また教育研究における戦略的な運営の実現、またそれをどうやって永続化するかというのは、先ほども言いましたようにすごく難しい問題ですので、これは1年間かけてじっくり考えていきたいと考えています。特にその中で融合というものが結局一番難しかったところは、まだ全員同じ見解が得られていないわけです。

 ここにとても抽象的な絵が2つありまして、これはどういうふうに見るかといいますと、すべての分野、例えば私がやっていますコンピューターサイエンスというもの基礎理論がありまして、だんだん広がっていって、いわゆる我々が直接◇当たる◇ようなシステムになっています。例えば一番基本的な数学的な理論がありますと、それを実際に応用して対応するというものがこういうふうにできているわけで、その中で1つのタイプの融合または連携は、その間にすき間があるときにすき間産業的にそこに入っていって、このすき間産業に入ることによって新しい分野を形成する、こういうタイプの融合が実際にあるわけです。

 例えば少し我々の分野とは離れますけれど、いわゆるバイオインフォマティックスというのは典型的なそういう分野かなと。生徒数が増えて情報科学との間に誰も積んでいないところがあるので、それをくむようなものを考えると。もう1つ考えられるのがここにありますように、例えばコンピューターサイエンスならコンピューターサイエンス、数理科学なら数理科学というような、また電子工学なら電子工学、電子情報だったら電子情報学というものがあって、その中にさらに、しかし実世界の我々の要求を包含的に解決するためには、いろいろな広い範囲のものをカバーしないと結局、物はできません。物を作るということは非常に幅が広い研究となるわけで、そのためにはそういうものをサポートするものとして、より基礎的な学問である、例えばコンピューターサイエンスや、例えば数理科学、例えば電子情報学というものが、ここのアプリケーションを支えるという形のもの、それがある種の融合だと考えています。

 最初に示しましたこの図をよく見ますと、実はこの図における融合というのは今のことを語っていまして、実世界の大域ディペンダブルと超ロバストの間では、すき間を埋めるような形での融合、実世界情報システムと大域ディペンダブルと超ロバストの間は、お互い狭い深いものが、実世界の実際に工学的に価値があるような実世界情報システムを支えるという上下関係の融合であるという、2種類の異なった融合を実現するということが、実は我々の使命であるということを、よく見るとこの矢印が物語っていると考えているわけです。

 ですから、大域ディペンダブルの研究開発をやっている者が、サブプロジェクトにヘッドクオーターから伝えたいことは、この大域ディペンダブルと超ロバストの間にはこういう形の融合がある。さらに大域ディペンダブルと超ロバストと実世界の中にはこういう形の融合が実現するということを念頭に置いて活動し、または融合的な結果を挙げていただきたいと考えているわけです。

 その結果、後に残る新しいものが創造できると確信していますので、ぜひとも期待したいというところで、私の短いお話を終わりにして、もっと実質的な研究の話に移っていきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)


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