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井上博允 情報理工学系研究科・工学部名誉教授
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井上博允名誉教授が、ロボット学の研究功績により平成20年秋の褒章において紫綬褒章を受章されました。
先生の受章における世界初の功績として、昭和39年になされた博士論文研究において、人間が行なうような精密で器用な手作業を実現する鍵は、作業中の反力に応じて指令自体を変化させる性質であり、それが双動性であることを指摘し、計算機で制御される人工の手にこの機能を組み込んで、クランクを回転させ、ピンを穴に挿入できることを世界で初めて実験で実証し、この研究が米国で始まろうとしていたロボットの研究者に高く評価され、日本のロボット研究が欧米からも一目置かれることとなったこと、さらに、その後、電子技術総合研究所において作業中のハンドの動きを視覚で観察して調節するビジュアルフィードバックによる物体組み合わせ作業も世界に先駆けて実現され、米国パターン認識学会の最優秀論文賞を受賞されたことなどが挙げられています。
先生は、東京大学に任官されてから永年にわたって、機械工学および情報工学の教育、研究に努められ、機械工学、電子工学を融合したメカトロニクスやロボティクスの新分野を自ら開拓されました。教育面では、伝統的な機械工学に新風を吹き込んで機械工学の教育体系の現代化を推進され、機械情報工学という新しい学科の創設に力を尽くされました。研究面では、機構、制御、認識、知能などロボットで必要とされるあらゆる要素技術の研究開発に自ら取り組むとともに、これらを統合して数々の知能をもつロボットシステムを開発され、科学研究費知能ロボット重点領域研究代表、経済産業省人間共存協調型ヒューマノイドロボットプロジェクトリーダを務められ、わが国のロボット学を世界のフロントランナーとして発展させることに貢献され、現在日本学術振興会の監事として我が国の基礎研究の振興に力を尽くされています。
以上のように、ロボット学における揺籃期から今日の成熟期に至るまで永年にわたって一貫してロボット学の発展に尽くされたその功績は誠に顕著であり、ご受章心よりお祝い申し上げます。 |