創造情報学専攻の田中久美子准教授、電子情報学専攻の苗村健准教授、数理情報学専攻の牧野和久准教授が、平成20年度文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞した(文部科学省の報道発表のURLはhttp://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/03/08030609.htm )。
田中准教授の受賞対象となった研究は「言語統計に基づく予測を利用した文書入力方法に関する研究」で、数理情報学専攻の武市正人教授、また同教授の元修士学生である犬塚祐介氏(現NEC勤務)をはじめとする学生など多くの協力者とともに行ったもの。かな漢字変換を一般化し、予測機能を利用する入力ソフトウェアのための数理的基盤を提案した。文書入力を情報理論上の通信モデルによりモデル化し、大規模な言語データから得た統計を利用して精密な入力ソフトウェアをつくる方法だ。この基礎モデルを、少数キーによる入力として複数言語で実現し、時計型など新世代機器への応用を探ったほか、身体障害者や外国語学習者など、情報発信における情報弱者による入力への応用可能性も示した。この成果は、日本発の技術基盤に根ざし、未来型機器類で万民が利用可能な入力方式として発展することが期待される。
苗村准教授は「学際分野における実世界指向メディア技術の研究」で受賞した。苗村准教授は光学現象とソフトウェア技術を駆使し、人が直感的に扱える実世界指向のメディア技術分野を開拓、コンテンツ制作も含めた作品展示という形で活動を展開してきた。その成果は、特殊なカメラ入力系、ディスプレイ系、通信・計測系に大別され、光学現象とソフトウェアの利点を高度に融合した着想が高く評価され、今回の受賞となった。本研究の成果は、実世界に根ざした、人に優しいメディア技術とそこに展示されるコンテンツ研究の両立により、心豊かな社会を築く技術基盤を切り拓くものと期待される。
牧野准教授は、「離散列挙問題に対するアルゴリズムの研究」で受賞した。列挙問題は、人工知能、データマイニングなど計算科学、工学などの広い分野に登場し、特に、列挙問題に対するアルゴリズムは、情報化社会のソフトウェア基盤技術としてその重要性が認知され、近年盛んに研究されている。牧野准教授は、列挙問題に対するアルゴリズムの開発、ならびに計算階層化を行い、大きな成果を収めている。特に、仮説補完と論理関数の相対化という2つの重要な列挙問題に対して効果的なアルゴリズムの開発に成功したことが評価された。本研究成果は、アルゴリズム理論分野のみにとどまらず、計算科学、工学などさまざまな分野での応用が期待される。
受賞式は平成20年度(第49回)科学技術週間特別行事の一環として、4月15日、東京・虎ノ門の虎ノ門パストラルで行われた。 |